「2020」を見据えた全日本男子の総括 取り組んできた方向性を貫くことが重要=バレー

月刊バレーボール

それぞれの収穫を手にした、それぞれにとっての通過点

大会1カ月前に追加招集された山本将平はサーブで勝負強さを発揮した 【坂本清】

 具体的な収穫としては、前述した経験に関する側面を始めとして、主にサーブとディグ(相手のサーブ以外のボールをレシーブすること)において光るものを挙げることができる。

 エースであり柱でもある石川祐希が機能しきれない時に、チームはどう対応していくのか。メンタル・プレーの両面で今回は苦しみながらも、決して無駄ではない経験を重ねた。

 あくまで「2020」を見据え、大会わずか1カ月前のアウトサイド転向で戸惑いつつ、「やるしかない」状況に放り込まれた小野寺太志はさすがの対応力を示してみせた。同じく大会1カ月前に追加招集された山本将平はイラン、ブラジルを相手に5本のサービスエースを奪う勝負強さを発揮した(サーブランキングは全体6位)。

 なかなかブロックポイントが取れない中で、前衛との関係から最適なポジションを見いだし続けた井手智は3戦目以降、冷静なプレースタイルを取りもどして貢献。「名古屋(前半2試合)では、浮き足立ってみんな空回りしていた部分もありましたが、大阪(後半3試合)ではまず落ち着いて自分のプレーができた中で、(最終戦は)叱咤(しった)激励する雰囲気もありました」と振り返った。ディグのランキングは全体1位で、ベストリベロ賞に輝いた。

課題も収穫も、どっさりと抱えた「1年目」

石川(左)はイタリアで、柳田はドイツでレベルアップを図る 【坂本清】

 全日本での経験、あるいはポジション経験の少ないメンバーたちも、全力を尽くす中で、それぞれ次の戦いに生かされる貴重な学びがあったに違いない。一方、全日本に入って4年目となる柳田将洋や山内晶大は、高い自覚をもってチームを鼓舞した。特に中垣内監督から「石川がいないことで、ぐっと責任感を持ってプレーしてくれている。そう感じます」と言われた柳田は、「来年のシーズンにつなげられるような経験をしたい」と話して、大会3日後の9月20日には海を越え、新天地(TVインガーソル・ビュール/ドイツ)へと旅立っていった。

 今季を通してみれば17勝10敗。課題も収穫も、どっさりと抱えて「1年目」のシーズンを終えた深津英臣主将は、大舞台の経験が持つ重要性にあらためて触れつつ「世界のトップは、技術以外の面ですごく強いなと思いました。それは、僕は分かっていたことですが、“全員が”今回、分かったと思います」と話した。

 戦いはまだまだこれから、大事なことは積み重ねである。「次こそは」という強い思いが、深津以下、アリーナを後にする選手たちの瞳には宿っていた。

(豊野堯/月刊バレーボール)

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著者プロフィール

1947年創刊。バレーボールの専門誌として、その黎明期から今日まで、日本のバレーボールを取り上げ、その報道内容は、全日本、Vリーグはもちろん、小・中・高・大学生、ママさんまで、多岐に渡る。

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