千葉にもたらした変化、今の課題は精神面 エスナイデルが感じた日本の特徴<前編>

小澤一郎

エスナイデルがもたらした変化

エスナイデル監督はピッチ上だけではなく、食事などさまざまな改革を行った 【(C)J.LEAGUE】

――変化をもたらしたということですが、具体的にはどういうことですか? 例えば、トレーニングについては何を変えたのでしょう?

 簡潔に言うと、むやみに「時間」を浪費する代わりに「強度」を高めました。今の時代はどういう監督であれ、トレーニングメニューのバリエーションは持っています。ただし、トレーニングの「時間」と「強度」については監督によって大きく変わるので、私自身もそれを変えようとしました。私が来たばかりの頃、選手はその変化への適応に少し苦労していましたが、今では適応しています。

――食事についても変化があったと聞いています。

 まずは時間を変えて、一日3食から4食へと変えました。一日3食は日本の習慣でもあるので、こちらも選手は最初苦労していました。食べるものについても脂質を減らし、たんぱく質を積極的に摂取するなど、よりアスリート向けの食事に統一しました。

 1食の中身についてもパスタや白米ばかりを食べるのではなく、栄養素のバリエーションがあるプレートをチームとして食べるようにしています。食事の変化については、選手たちが非常に良く適応してくれたので、何の問題もありませんでした。

――シーズン開幕からけが人が少ないということですが、食事の変化が直接的効果となって現れているのでしょうか?

 食事だけではなく、全ての取り組みの成果だと理解しています。トレーニングの変化もそうですし、プロ選手としてピッチ外でどう振る舞い、どのように休むべきかといったことも細かく指導しています。そういった全てのことが影響してのけが人の減少です。とはいえ、まだけが人は減らせると思っていますし、減らしていく努力をしなければなりません。

フィジカルではなく、メンタリティーが問題

Jリーグのインテンシティーは高いものの、90分保つことができていない 【(C)J.LEAGUE】

――日本サッカー界では近年、「インテンシティー(強度)が足りない」という議論が多くあります。外国人監督としてその点をどう見ていますか?

 インテンシティーが足りないとは思っていません。Jリーグの試合は高いインテンシティーで行われています。それよりも「どうやってそのインテンシティーを維持するか」が問題です。その点について私自身はフィジカルの問題ではなく、メンタリティー、集中力の問題だと考えています。

 日本の選手は強いメンタリティーを持ち続けること、高い集中力を維持することに問題を抱えています。それによってプロの試合でも小学生が冒すような軽率なミスが出ている。日本人は基本的に高いインテンシティーでプレーできると思いますし、少なくとも私の選手たちはそういう選手です。

 よって、インテンシティーの持久性を90分まで高める努力をすることで、最終的には軽率なミスが減り、逆にチャンスをきっちりものにできるようになると思います。

――インテンシティーを戦術面で見た時にはどういう感想をお持ちですか? J2にはハイプレスを仕掛けるチームが多いですが、Jリーグ全体で見た時にはまだまだ自陣に引いて相手の攻撃を待ち受ける戦術が多く、それによってゲームインテンシティーが低下しているように私は感じています。

 J2以外のリーグはよく分かりませんが、少なくともJ2で対戦した全ての相手が高いインテンシティーを持っていました。われわれのプレースタイルによって相手のインテンシティーが引き出されたのかもしれませんが、私自身は質問にあったような認識は持っていません。インテンシティーについては前述の通り、持続性とエリアに応じて使い分けることが何より重要なのです。

<後編は9月22日掲載予定>

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著者プロフィール

1977年、京都府生まれ。サッカージャーナリスト。早稲田大学教育学部卒業後、社会人経験を経て渡西。2010年までバレンシアで5年間活動。2024年6月からは家族で再びスペインに移住。日本とスペインで育成年代の指導経験あり。現在は、U-NEXTの専属解説者としてLALIGAの解説や関連番組の出演などもこなす。著書19冊(訳構成書含む)、新刊に「スペインで『上手い選手』が育つワケ」(ぱる出版)、「サッカー戦術の教科書」(マイナビ出版)。二児の父・パパコーチ。YouTube「Periodista」チャンネル。(株)アレナトーレ所属。

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