オーストラリアの失速を招いた新システム つなぐサッカーに固執、評価が揺らぐ名将
つなぐことに固執して自滅
日本戦でもつなぐこと固執。中盤で激しいプレッシャーを受けミスを連発した 【写真:ロイター/アフロ】
浮足立つオーストラリアの間隙(かんげき)を縫って、日本が技ありの先制。追う立場になってからも、サッカルーズはつなぐことに固執。ユリッチを投入、さらには日本の天敵ティム・ケーヒルを送り込み2枚のFWを前線に並べても日本の嫌がるフィジカル勝負に出ることはなかった。これには日本のメディアも相当驚いたようだが、ポステコグルー監督がブリスベン・ロアー時代にGKにゴールキックを長く蹴らせないくらいつなぐことにこだわることを知る筆者ですらも、さすがに驚いた。点が欲しい状況で点が取れそうな相手の嫌がる策を講じない戦い方に終始した結果の自滅。井手口の値千金の追加点を与えた時点で、手負いのサッカルーズに反撃の術は残っていなかった。
試合後のポステコグルー監督は、「われわれのプレーは、基本的にフィールドをコントロールするやり方。ポゼッションはできたが、それが効果的でなかった。サイドチェンジでピッチが速すぎて、中央でボールを抑えることができなかった」と憔悴(しょうすい)しながら振り返るのが精いっぱいだった。
日豪戦の蹉跌(さてつ)からわずか5日後に行われたタイ戦。ここでも、サッカルーズは同じスタイルに固執する。ボールを保持するときのプレッシャーのレベルと質が日本のそれとは比較にならないことで、試合の途中ではポゼッションが8割を大きく超すほど圧倒的にゲームを支配した。それでもゴールがどうしようもないほどに遠い。打ちに打ったりの45本のシュートでわずかに2得点と、この試合では選手たちがシュートを外して点を仰ぐシーンばかりが目立った。
このまま理想のスタイルに固執するようだと……
評価が揺らぎ始めたポステコグルー監督は、プレーオフでどんなサッカーを見せるのか 【Getty Images】
それでも、筆者のポステコグルー監督への信頼は変わらない。ただ、自分たちのスタイルを追い求めるあまりに自分たちの強みをも忌避するようでは今後の苦戦は免れない。「理想のサッカー」と「勝つためのサッカー」が必ずしもイコールとはならないことに、彼ほどの指導者が気付かないはずはない。自らの理想の具現化に固執したあまり、結果的にW杯出場を逃すことがあれば、それこそ本末転倒とのそしりは免れないのだから。
今はあと2戦、W杯最終予選の緊張感を味わえるとスーパー・ポジティブに考えつつ、来月のプレーオフの決戦を待つばかりだ。