ヤンキースとRソックスが迎える新時代 “特別なライバル関係”の復活は間近

杉浦大介

ヤンキースは先発4本柱が生命線

秋が深まるにつれて、田中をはじめとする先発陣の働きが重要になるだろう 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 そして、今年中にライバル関係がヒートアップするかどうか、鍵を握るのはヤンキースの方に違いない。最新のシリーズではヤンキースが勝ち越したが、現時点でのチームの成熟度ではレッドソックスが上。セール、デービッド・プライスという今が全盛期の左腕二枚看板、クレイグ・キンブレルという最高級のクローザーを持つレッドソックスは、プレーオフでも脅威の存在となるはずだ。

 一方、ヤンキースは……? 前記した生え抜きの若手に加え、今夏のトレード期限にソニー・グレイ、デービッド・ロバートソン、トッド・フレージャーらを獲得。田中、マット・ホリデーといったベテランも故障者リストから復帰以降は好調で、チーム全体の層が厚くなったことは間違いない。

「優勝したいね。このチームには十分なタレントが備わっている。過去に優勝したチームの中には、今の私たちほどのタレントをそろえてなかったチームは存在する。(クラブハウスを)見渡せば、ポテンシャルを感じるよ」

 2日のゲームで自らが決勝ホームランを打って勝った後、ホリデーが残したそんな言葉は単なる身びいきではなかっただろう。

 前記通り、セベリーノ、田中、グレイ、サバシアというヤンキースのローテーション投手たちは上り調子で、9月3日までの21戦では先発陣が10勝5敗、平均防御率2.77と安定しているのは心強い。秋の鍵を握るのはやはりピッチャーだけに、この4本柱の働きはチームの生命線になる。

 ブルペンでは105マイル左腕のアロルディス・チャプマンこそ謎の不振だが、デリン・ベタンセス、ロバートソンら頭数はそろっている。あとはジャッジ、サンチェス、バードといったやや経験不足の若手主力打者たちが、大事な時期にタイミング良く活躍できれば……今秋、アメリカ東海岸に久々にベースボールの熱狂が戻ってくるかもしれない。

 理想はヤンキースがレッドソックスをシーズン終盤まで追い込み、激しい地区優勝争いを繰り広げること。さらにポストシーズン中にも対戦がかなえば、多くのベースボールファンを騒がせるシリーズとなるだろう。

 そんな楽しみなシナリオが実現するかはわからないが、誤解を恐れずに言えば、MLBはやはりヤンキースとレッドソックスが元気な方が面白い。17年はライバルの新時代開始に向けての第一歩。“特別なライバル関係”のボルテージが再び上がる秋は、もう間近に迫っているのかもしれない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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