ハリル「歴史に残る試合を作りたい」 W杯最終予選 豪州、サウジ戦メンバー発表

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サムライのスピリットが必要

大一番に向けハリルホジッチ監督は「サムライのスピリットが必要」と気を引き締めた 【スポーツナビ】

――たくさんの新しいメンバーが入ってきたり、戻ってきたが、オーストラリアの特徴は高さでセットプレーが脅威。日本の弱点は高さということで、植田、三浦を選んだと思う。もし吉田と昌子のどちらかがけがをした場合、プレッシャーのかかる中で経験のないセンターバックとして途中で出すのは難しいのでは?(秋田豊/テレビ東京)

ハリルホジッチ すでにけが人がたくさんいるが、秋田さんが2人増やしてしまいましたね(笑)。それは非常に悲観的な見方だと思います。元選手であることも存じ上げているが、日本の選手のメンタリティーもよくご存知だと思う。日本では若手を信頼して使うというところが少し欠けているかもしれない。私にはあまり理解できない部分だ。そういう状況があると、若手に無意識にプラスアルファのプレッシャーを与えることになる。私はその選手が17歳でも18歳でも、プレーに値するなら使う。もちろん、そこからさらに進化していき、その選手の存在感というものがチームにとって重要なものになる。われわれは50人くらいのラージリストから絞ってこのリストを作っている。コーチングスタッフや西野さんも視察を行ない、全員で意見を出し合い、それぞれの意見を聞きながらこのリストを作った。われわれがベストだと思うのが本日発表したこのリストだ。

 もちろん、より経験のある選手が望ましいかもしれないが、どこかのタイミングで経験を積み始めるということも重要。私は能力のある、才能のある選手だと信頼して呼んでいる。ヨーロッパではイングランドでもフランスでも、18歳で代表デビューする選手がいる。フランスでも(ウスマン・)デンベレでも(キリアン・)ムバッペでもプレーしている。

 日本には常に年配を尊重する伝統があることも理解しているが、そういった状況が苦しいという選手もいるかもしれない。私は若い選手にも自信を与えようと思い、日本人コーチにも連絡を取らせたりして、自信を与えようとしている。ピッチ上では違う状況のこともあるが。何が起こってもおかしくない。皆さんもサッカーをプレーしたことがあるなら、18歳のときより25歳の方が良かったという思い出はあるだろう。

 だが、その時点でベストな状況の選手を使うというのが、私のサッカーの見方だ。そういう中で変えたりということはあるが、いずれにしてもハイレベルでプレーするために欠かせない部分はフィジカルコンディション。そこの準備ができていなければならない。そして今、たくさんのけが人がいる。マヤも少し心配した部分があったが。フィジカルコンディションのことを考えると、プラスアルファのトレーニング、あるいは内容を変える必要があるかも考える。私はたくさんのテストを行ない、チェックしているが、フィジカルコンディションの準備という意味で裏付けのある意見をいくつも持っているが、今は発表すべき時ではない。しかしけが人が出てしまったら、他の選手を信頼して使いたい。

――前回、アウェーのオーストラリア戦は本田を1トップに置いて、相手の良さを出させないサッカーで、勝つことはできなかったが勝ち点1を獲得した(1−1)。今回、ホームでの戦い方のイメージは?

ハリルホジッチ それぞれのゲームで、そのゲームに向けた準備がある。前回のアウェーのゲームで日本が守備的だったという意見も聞いた。守備の面で戦術・規律を守って、相手にチャンスを作らせなかった側面はある。だが、選手たちに点を取るなという指示は出していない。ただ、その試合ではスピードを使った攻撃はできなかった。でも結果的にチャンスを3つ作った。不運なことに、そこで決めることはできなかったが。

 今度はホームで試合をする。もちろんアウェーゲームでも勝利を目指したが、さらに意欲的にホームでは勝利を目指したい。よって、より攻撃的になると思う。だが、同時に守備もしなくてはならない。オーストラリアは敗戦の少ないチームだ。しかし、われわれは自分たちの特徴を使っていけば、そこを崩せると思うし、全員で守備もしなければならない。長い時間、この戦略は練ってきている。これから誰をスタメンで使うのか、誰が相手のディフェンスに最もダメージを与えられるのかということを状態を見ながら考えていきたい。オーストラリアはディテールまで分析している。長所はもちろんあるが、もちろん弱点もある。もちろん勝つためには、相手より多く得点を決めないといけない。

――FWを9人選んでいるということは、そこに不確定要素があるということで整理して呼んでいると思うが、サウジアラビア戦で戦略的に選手を変更していくこともあるのか?(田村修一/フリーランス)

ハリルホジッチ もちろん、けが人と関係なく戦略は練ってきている。アウェーでこういう戦いをしたから、全く同じようにしようということはない。また、どの選手を使うかによっても形は変わってくる。それぞれの選手に守備の役割と攻撃の役割がある。全員がしなければならないのは、たくさん速く走るということだ。そういう形でこのゲームに挑まなければならない。

 もちろん、スピードを上げればテクニックミスが生まれる余地もある。だが、私はコンフェデレーションズカップを見て、オーストラリアはゲームコントロールが非常にうまいチームだと思った。限界を超えてしまう(ミロシュ・)デゲネクの激しさ、チリ戦で驚いた。前半だけで4枚のイエローが出ていた。レッドでもおかしくないものもあった。同時に、メンタル的なところでしっかりコントロールしながら、安定もしている。そういった形で、次の試合でもやってくると思うが、ホームでそれに応えられないようであればわれわれにとって難しい試合になる。

 だから選手たちにはフィジカルコンディションの準備をしなければならないと強調している。このような試合に臨むのは初めてではない。いろいろな人がいろいろな意見を言ったりするが、代表監督より知識のある人がたくさんいるようだから、いろいろな意見――いいかげんなことやおろかなことも出るかもしれないが、幸運なことにそういったことに私は耳を傾けていないし、ビジョンを持って、オーストラリアを把握しながら準備を進めていきたい。

 ただ、時間があまりない。全員がそろうのは火曜日以降。トレーニングは多くできないので、選手たちには話をしっかりしていきたい。自分たちの特徴を生かして戦えば、相手にダメージを与えられると思っている。そのためには、自分たちの可能性を信じないといけない。いろいろな困難な点はあるが、そうしなければ。もちろん言葉で言うのは簡単だが、ここで泣くのではなく、意欲的に勇敢に、大胆にいかなければいけない。

 合宿になると、選手たちと個別に話をしたりもする。特に若い選手と多く話をして、準備ができているかを確認したり、勇気を与えたり、励ましたりしている。でもこのチームはすでに個性を見せている。UAE戦に今野(泰幸)を連れていったが、長い間代表を離れていたが、Jリーグで非常にいいコンディションでプレーしていた。その試合ではいいプレーを見せてくれたが、今は残念ながらそこまでのプレーは取り戻せていないと思う。

 重要なのは選手たちが観客から感じるのがプレッシャーでなく、応援という後押しだということ。勝利に向けてポジティブに考え、楽観的な見方を選手たちにも伝えたいし、勝利を求めたい。この状況を恐れないで乗り越えないといけない。アウェーゲームでも相手にとって困難な状況を作ることができた。なぜ、ホームでできないのか。できないことはない。自分たちのサポーターが作る素晴らしい雰囲気の中で、それができないわけがない。相手は2メートル近い選手が多いが、そういう選手との戦いを恐れてはいけない。サムライのスピリットが必要だ。

――4年前、アルジェリアの監督だった時、W杯出場権を決めたとき、選手とチームマネジメントはどのように行なったか? その経験がどのように今生きているか?

ハリルホジッチ まず、チームがW杯に行くと確信していくことだ。アルジェリアも日本とは違うサッカーへの熱狂があるので、プレッシャーがきつかった。その中で、自分たちがナーバスな姿を見せないことが重要。そして選手の能力、才能、可能性を信じなければならない。選手たちがこれから作っていく物語があるが、その中でそれぞれが自分の個性を見せて、W杯を目指さなければならない。

 W杯に出場するというのは世界中どこの国でも簡単なことではない。前回のW杯出場を決めたときも、終了間際のPKだった。常にポジティブに考えていかなければいけない。コンディションがよくないなどいろいろ考えすぎるのではなく、自分たちは今、首位にいる。皆さんの中でも私を批判したいのであれば、W杯に出てからの方が批判する場が増えるのでいいのではないか。皆さんはそれで給料をもらい、私は別の仕事で給料をもらっている。

 なぜ今回、けが人を含めこれだけたくさんの選手を呼んだのか。W杯で全員がいい思いをするわけではない。選手にとってはこれが最後の予選かもしれない。彼らの意欲は強く感じている。その意欲を感じるからこそ、落ち着いてポジティブに状況をとらえながら準備を進めたい。アシスタントコーチたちには若い選手たちに声をかけてほしいと頼んでいる。あまり時間はないが、そういった形で進めてきている。そしてあまり恐れない、そこがこの状況では重要だと思う。非常に大事な時期だと思う。

――この暑さやコンディションを考えると、コンディションのいい国内組を起用した方がいいと思うが、特にFWはそれでも国内組より海外組の方が信頼できるという判断なのか?

ハリルホジッチ 私があまり国内の選手を使わないと言っている方もいるが、先ほどの今野の例でも挙げたように、代表でプレーするコンディションにあると感じた選手は呼んで使っている。私は来日した時から、名前だけでプレーする選手はいない、コンディションのいい選手を使う、と言い続けている。今回は杉本が入っている。非常にコンディションがよくて入ってきている。大迫、岡崎よりコンディションがよければプレーする可能性ももちろんある。そのように使うことに全く問題はない。この前のJリーグのゲームでのプレーを続ければ、代表にも呼ばれ続けるだろう。

(6月の)イランでのイラクとの戦いでも今野、井手口、倉田(秋)、たくさんのJリーグの選手も出ている。けが人が出て、代わりに入ったという状況もあるが。植田や三浦のような若い選手も入ってきている。昌子もそうだが、彼らは代表に値すると思っているのでリストに入れている。私にとってはJリーグの選手なのか、海外組なのかは最も重要なポイントではない。代表に呼ばれるコンディションにあるのかを見せることが重要。Jリーグの選手であっても問題なく使いたいと思っているし、そこは分けて考えていない。

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