森岡亮太がベルギーでセンセーションに 2試合で2ゴール1アシストと絶好調

中田徹

森岡がビルドアップに絡むと攻撃によどみがなくなる

攻撃だけではなく、守備でも森岡はチームに貢献している 【写真提供:WAASLAND-BEVEREN】

 7月21日、プレシーズンマッチのOHL(ベルギー2部リーグ)戦の森岡に対する第一印象は、彼がビルドアップに絡むとべフェレンの攻撃によどみがなくなること。テクニックに加えて、パスのテンポが良いのだろう。2つのゴールシーンも、プレーをさかのぼると、そんな彼の特徴が表れている。

 メヘレン戦の1点目は、ハーフウェーラインを越したところで得たFKを、森岡が間髪入れずに左サイドへ開いたセンターバックのルディ・カマーチョに蹴り、左から右へ攻撃が展開する間にペナルティーエリア内まで走り込んで決めたもの。

 2点目は後半キックオフからメヘレンが仕掛けてきた攻撃をチームが耐えていた時に、相手ボランチ、エル・マサウディの持っていたボールをかっさらって、50メートル独走のドリブルがカウンターの起点となっていた。この2次攻撃から、もう一度、森岡はショートカウンターの起点となり、自らのゴールにつなげていったのだ。

 ゲンク相手にスルーパスを通し、メヘレン戦でも立ち上がり3分にジーニョ・ガノに好スルーパスを送ってビッグチャンスを演出した森岡に対し、メヘレンはエル・マサウディを中心に中盤の選手が入れ代わり立ち代わり森岡をケアし続けたが、その警戒網をくぐり抜けての2ゴールだった。

 ゴールだけではない。守備でも森岡はメヘレンの中盤の3選手全員からボールを奪い取り、返り討ちにしていた。

日本代表復帰への期待

2ゴールという数字と圧巻のパフォーマンスに、日本代表復帰への期待が膨らむ 【写真提供:WAASLAND-BEVEREN】

 もうひとつ記しておきたいことは、この日、森岡は味方と呼吸が合わなかった後の、次のプレーを成功させていたことだ。前半、ヒールキックでパスをつなごうとしたところ、受け手のガノが反応し切れなかった。そこで森岡はかなり厳しくガノに要求を出していた。すると後半に同じようなシチュエーションが生まれ、ガノはしっかりヒールキックをもらえる位置に動いて、森岡からの相手の意表を突くパスを受けていた。

 後半、GKメルベイユ・ゴブレに対する要求もそう。相手の攻撃を防いだゴブレがボールを持った瞬間、森岡は右へダッシュしてカウンターの起点を作ろうとしたが、ゴブレは時間を稼いで結局、パントキックを蹴ってしまった。この時は、森岡のみならずスタンドのファンも不服そう。次に相手CKをキャッチしたゴブレは、左にダッシュした森岡に間髪入れずスローし、ゴブレ→森岡→アンポマーと2本のパスで決定機が生まれた。

 もっとも森岡に言わせると、GKとの連係に関しては、サポーターの圧力がゴブレにかかっていたという。

「最初、右に走っていって出てこなかったじゃないですか。サポーターが『おい、出せよ』みたいな雰囲気を多分出したでしょ。だから左に走った時、『これは絶対に出てくる』と思いながら走っていました。そしたら、ホラみたいな(笑)」

 2−1になったことで、後半はメヘレン陣内にスペースが生まれ、森岡は自由自在にスルーパスを通し続けた。2ゴールという数字と圧巻のパフォーマンスに、日本代表復帰への期待が膨らむ。

「これでやっと(協会関係者の)重い腰が上がってくるかどうかというところじゃないですか。それで、(視察に)来た試合が一番重要だと思います。何にしても続けることですよね。ステップアップしたいというのにしても、代表に入りたいというのにしても、試合に出たいというのにしても、やはり、こういういい状態を続けていくことですよね」

 森岡が2ゴール目を決めた瞬間、ベルギー人記者が「森岡は英語を話せるのか?」と聞いてきた。案の定、森岡に対するインタビューのリクエストが引っ切りなしに続き、彼も「一体、今もう何時なんやろう」と悲鳴を上げるほどだった。

 そういえば、ベルギー人記者は森岡にこう言っていた。「君はもう、ベルギーでセンセーションなんだよ」と。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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