「Bリーグ」創設元年を理事はどう見たか 企業スポーツの“プロ化”と今後の課題

スポーツナビ
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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

Bリーグ理事の竹内美奈子氏が初年度の総括、今後に向けた課題について語った 【スポーツナビ】

 公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団と、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会が主催する「みなとスポーツフォーラム 2019年ラグビーワールドカップ(W杯)に向けて」の第74回が7月27日、港区のみなとパーク芝浦・男女平等参画センターリーブラホールで開催された。

 今回は「Bリーグ創設元年終了。Bリーグの未来とその課題 〜有識者理事からの視点〜」と題し、株式会社TM Futureの代表取締役と、ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(B.LEAGUE)理事を兼ねる竹内美奈子氏を招き、講演が行われた。

分裂していた2つのリーグが1つに

2つのリーグが1つになり、「Bリーグ」としして新たなスタートを切った 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 2016年9月22日、男子プロバスケットボールの新リーグ「Bリーグ」が開幕した。約10年間もの間、日本のバスケットボールのトップリーグは「NBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)」と「bjリーグ(日本プロバスケットボールリーグ)」の2つに分裂しており、厳しい時代を過ごしていた。

 この事態を重く受け止めたFIBA(国際バスケットボール連盟)から、国際試合の出場停止処分という制裁措置を受けたことで、JBA(日本バスケットボール協会)はJリーグの創設に携わった川淵三郎氏をチェアマンとするタスクフォースを立ち上げた。その後、約半年間という短期間で大改革が行われ、2つのリーグは統合。15年8月には制裁が解除され、日本のプロバスケットボールリーグは翌年「Bリーグ」として新たなスタートを切った。

“プロ化”された団体競技のスポーツとして、野球、サッカーに次いで3番目にあたるバスケットボールだが、Bリーグの特徴は「JBAとBリーグが非常に近い関係にあること」だと竹内は語る。FIBAから制裁を解除された際、モニタリング項目として残された1つが、「代表の強化」だった。そのため、現在はJBAとBリーグが連携を取り、リーグ戦のないウイークデーに候補選手を集め合宿を実施するなど、代表チームを常設し日々強化に励んでいる。

「ブレイク・ザ・ボーダー」で新たなチャレンジを

積極的に新しいチャレンジを行うBリーグには「ブレイク・ザ・ボーダー」という行動指針がある 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 さまざまな紆余(うよ)曲折を経て、新たな一歩を踏み出したBリーグはどのようなビジョンを描いているのだろうか? 

 竹内は「世界に通用する選手やチームの輩出」、「エンターテインメント性の追求」、「夢のアリーナの実現」という3つのキーワードを挙げて説明する。

 前述のような代表の強化施策や、開幕戦でのLEDコートを使った演出など、ビジョンを実現するために、積極的なチャレンジを行うBリーグだが、その背景には行動指針としている「BREAK THE BORDER(ブレイク・ザ・ボーダー)」という言葉がある。

「もともと(NBLとbjリーグという)2つのリーグの間にあった壁を壊そうという意味がありますが、常識に捉われずにやろう、チャレンジしようという意味も持っています。これは非常に便利な言葉で、チャレンジするかどうかで迷ったときに『ブレイク・ザ・ボーダーだから、やってみようよ』と、後押しをしてくれる言葉になります」

 ファッション雑誌『メンズノンノ』とのコラボレーションや開幕戦での「EXILEファミリー」のパフォーマンスなど、Bリーグが「派手ではなく、ド派手」(竹内)な演出にこだわる背景にはこのようなビジョンと行動指針が深く関係しているようだ。

最も成功を収めたのは千葉ジェッツ

最も成功したのは千葉ジェッツ。平均入場者数は4500人を記録した 【写真:アフロスポーツ】

 続いて話題は開幕シーズンの総括に移った。収益面ではリーグ全体の収入は約50億円を記録し、クラブの収入はB1が平均約6〜7億円となった。10億円を超える見込みのクラブも数クラブ出つつある。入場者数はB1で50パーセント、B2で33パーセント増加している。平均の入場者数はおよそB1で2800人、B2で1200人という結果となった。

 チーム別に見ると、最も成功を収めたのは千葉で、平均入場者数は約4500人を記録した。B1全体の平均が3000人弱ということを考えると、見事な数字と言えるだろう(最高入場者数は7300人超)。千葉は2年前の平均が約1900人、昨シーズンは約3800人と、年を追うごとに成長していることがうかがえる。

 一方で、サンロッカーズ渋谷や川崎ブレイブサンダース、アルバルク東京などは集客で苦労しているという現状もある。昨シーズンのCSに進んだ8チームのうち、6チームを占めるNBL勢だが、強さが観客数に比例しないというジレンマを抱えている。

竹内が挙げた3つの課題とは?

まだまだ解決すべき課題も多いが、Bリーグは日本のプロスポーツ界に確かな爪痕を残した 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 Bリーグ元年を終えて、竹内が課題として挙げたのは3つだ。

 まずはFIBAのモニタリング項目にもなっている「代表強化」。日々行っている候補選手を集めた合宿のほかにも、リーグは各クラブにユースの設置をするよう働きかけており、18−19シーズンまでにはすべてのB1クラブがユースチームを持つよう、ライセンス上で義務付けている。今後は若手の選手の強化にも力を入れていくつもりだ。

 また、Bリーグは「ホームアリーナ」にも課題を抱えている。昨シーズンでアリーナを満員にした試合は全体の約3分の1にも及んでおり、今後に向けてアリーナを大きくしていく必要がある。しかし、施設の改築や増設となると、かなりの時間を要するため、リーグのビジョンである「夢のアリーナの実現」に近付くためにも、これを重要な課題と捉え、力を入れていく方針だという。

 最後に竹内は各クラブの経営に関して、「健全経営」と「人材育成」という2点を挙げた。

「初年度は『ブレイク・ザ・ボーダー』の元、Bリーグの新しい世界観を作るという努力を重ねてきましたが、今後は足元を固めることが必要になってきます。そういう意味でも、鍵となるのが『人材育成』であり、経営者としても『真のプロフェッショナル』を育てる必要性があると思います」

 野球やサッカーとは異なるアプローチで、さまざまなチャレンジを行ってきたBリーグ。まだまだ解決すべき課題も多いが、日本のプロスポーツ界に確かな爪痕を残した「創設元年」となった。

(本文中敬称略)

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