清宮幸太郎に神様が残してくれたこと 大きな成長を実感した早稲田実の3年間

清水岳志

神がかった試合が多かった2年半

1年春から高校球界を賑わせた早稲田実・清宮幸太郎の最後の夏は西東京大会決勝で敗れ、自身3度目の甲子園はならなかった 【写真は共同】

 野球の神様に愛されるように――

 選手宣誓で早稲田実・清宮幸太郎は言った。決勝戦の敗戦後、小さいころから憧れたそのユニフォームを着て最後のインタビュー。清宮は決勝戦で野球の神様がいたかどうか、問われた。

「どうですかね。まだ、わからないですね」

 この2年半、野球の神様に見守られてきた、と折に触れて言われてきた。1年生の夏の西東京大会決勝戦は0対5からの大逆転劇で甲子園に出場した。昨年秋の東京大会決勝戦では自身は5三振しながら、9回裏での逆転サヨナラ勝ちでセンバツ出場につなげた。

 今年の春季東京大会は自らの同点ホームランなど2本のホームランを放って18対17で優勝。確かにどれも神がかっていた。清宮本人の存在感と球場全体で後押ししてくれる雰囲気がそうさせるのだが、確かに神がかっていた。

力負けの決勝…清宮の失策が失点に…

決勝では痛烈なライト前安打を放つ3打数1安打。高校最多記録となる通算108本塁打はならなかった 【写真は共同】

 では最後の3年夏、これまでのように神様がいたとしたら、ゲームをひっくり返して優勝もあり得たはずだ。しかし、そうはならなかった。

 2対6……。東海大菅生のほうが力は上だったと言える。6試合目で初めて先制を許し追いかける展開。追いついてもリードは奪えない。清宮の通算108本塁打も封じられ、打線は散発7安打に抑え込まれた。

 投手・雪山幹太は積極果敢な菅生打線に11安打を浴びた。5回の勝ち越し点は清宮が内野ゴロの送球を後逸し、9回のダメ押し点も清宮の悪送球。これまでだったら、逆転を信じ声が出ていただろうが、最終回に涙を流す選手がいた。力負けだった。

父・克幸氏から受け継がれたDNA

円陣の中心で味方を鼓舞する清宮 【写真は共同】

 でも、そこには、実は神様はいてもいなくても、良かったのではないか。清宮にとって、神様が関わらない仲間との人間同士の日々が大切だったから。

 清宮の父親、克幸氏は現ヤマハ発動機のラグビー部監督。遡れば、選手時代は高校日本代表の主将、早稲田大でもキャプテンを務め大学日本一になっている。そのDNAを幸太郎も受け継いでいる。

「ワン・フォア・オール オール・ファオ・ア・ワン」
(みんなは1人のために、1人はみんなのために)

 ラグビー精神を表す言葉として使われるが、野球部主将としても意識するのか以前、聞いたことがあった。「あえて言うことじゃなくて、当たり前のことじゃないですか。ラグビーに限らないです」と、やり取りとしては一笑に付される愚問だった。

 和泉実監督も「清宮キャプテンのもと、一つ言うとその先を理解できる。本当にいいチームになった」と口元を緩ませた。

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著者プロフィール

1963年、長野県生まれ。ベースボール・マガジン社を退社後、週刊誌の記者を経てフリーに。「ホームラン」「読む野球」などに寄稿。野球を中心にスポーツの取材に携わる。

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