ダブル表彰台で“お家芸”復活の兆し 平泳ぎの小関、渡辺が築いた確かな礎

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ダブル表彰台に安堵した小関と渡辺

戦略がはまり、銀メダルを獲得した小関。ライバルの渡辺にも競り勝った 【Getty Images】

 だが、小関はラスト50メートル勝負に自信を持っていた。準決勝後に「ラスト50メートルはまだまだ(タイムが)上がる余地はある。チュプコフと(ロス・)マードック(イギリス)の2選手がかなり調子いいので、ラスト25メートル勝負かな」と語っていたほどだ。

 コーチ陣との話し合いのもと、小関は決勝レースで「125メートル(地点)から徐々に上げていく」と決めていた。その戦略がハマった。「最後は1、2、3位がかなり混戦だったと思うのですが、そこでしっかり125メートルから上げていくレースができたから、ラスト25メートルをしっかりと泳げたと思います」。

 小関の言葉通り、最後は大混戦だった。ゴール後に選手たちが一斉にビジョンを確認する。優勝は残りの50メートルですさまじい追い上げを見せ、2分6秒96という好記録だったチュプコフ。0秒33差で小関、そのさらに0秒18遅れで渡辺が3位だった。

「もちろん優勝するという思いでずっとやってきましたが、去年(リオ五輪で)メダルを取れなくて悔しい思いをしているので、その悔しさを今回晴らせたのはすごくうれしかった。小関さんともダブル表彰台をとれて、ほっとしたというか、素直にうれしかったです」(渡辺)

 小関も「よかったーという感じです」と喜びよりも安堵(あんど)の表情。「彼(渡辺)も世界記録保持者として臨んだレースだった。本人がああいう性格なのであまりプレッシャーとかは感じないと思うのですが、周りがどんどん持ち上げていくような感じだったので、僕としても一平君には負けられなかった」。ライバル渡辺に競り勝っての銀メダルに、思わず笑顔がこぼれた。

さらなる高みへ「次は一番上を」

お家芸復活へ確かな礎を築いたが、2人が見据えるのはさらなる高みだ 【写真は共同】

 切磋琢磨(せっさたくま)の末、世界の表彰台にまでたどりついた小関と渡辺。男子の平泳ぎは過去2回の世界水泳、昨年のリオ五輪でメダルを獲得できておらず、かつての強さが影を潜めていたものの、“ダブル表彰台”という分かりやすい形で日本のお家芸復活を世界にアピールすることに成功した。ただ、2人は今回の結果に満足感は示しつつ、さらなる高みを見据えた。

「一番上は取れていないので、次は一番上を取ってさらにダブル表彰台で日本のお家芸を見せたい」(渡辺)

「2人でワンツーフィニッシュしようという目標を立てて、今回はかなわなかったのですが、お互い初の国際大会でのメダル獲得なので、ダブル表彰台もできたことですし、いい経験になったと思います」(小関)

 もちろんこの結果だけで、お家芸の完全復活とはまだ言い切れない。しかし、それに向けて確かな礎を築いたことは間違いないだろう。

(取材・文:澤田和輝/スポーツナビ)

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