FC岐阜で大革命が起きている 未完成だが、夢に溢れたサッカーを実施中
シュート決定率は高いが、PA進入数が少ない
大木監督のもと魅力的なサッカーを見せている岐阜が下位に低迷している理由は? 【(C)J.LEAGUE】
攻撃面については、シュート決定率(シュート数に対するゴール数の割合)が15.5%で、J2では1位だ。フィニッシュに問題があるわけではなく、その精度は相対的に優れていることが分かる。
しかし、気になるのはシュートの総数が181本で、17位にとどまっていること。さらにアタッキングサード進入数が1132回で1位にもかかわらず、ペナルティーエリア進入数は287回で10位に落ちる。敵陣にかなり押し込んではいるが、そこから最後のひと崩しについては、ちょっと物足りない数字だ。
シュート数が少ないこと自体は、必ずしも悪いとは言えない。数は少なくても決定率は1位なので、おそらく相手ディフェンスを崩し切る意識が強く、ビッグチャンスを欲張っているということだろう。それはそれで岐阜らしいスタイルだ。しかし、ペナルティーエリア(PA)進入数の少なさは改善したい。攻め込んでいる割に、最後のひと崩しで手数が足りなくなるのは、岐阜の戦い方としては課題だ。
カウンター対策は課題
【データおよび画像提供:データスタジアム】
守備面で気になるのは、ボールを奪われた直後に関するデータだ。岐阜はボールを奪われてから10秒未満に59本もシュートを打たれており、それが失点につながる被決定率も19%と非常に高い。また、相手にボールを奪われてからシュートを打たれるまでの平均時間は9.7秒。これはジェフ千葉と並び、J2で最も短いものだ。
要はカウンターを食らっている、ということ。岐阜は奪われたボールを即座に奪い返すカウンタープレスを実践しているが、そこで奪えなかったとき、失点につながりやすい。これは岐阜だけでなく、千葉も同じ傾向の数字が出ている。ポゼッションとプレッシングを志向するチームにとって、カウンター対策は共通の課題だ。
ただし、岐阜と千葉は、それを解決する守備アプローチが異なる。違いが端的に表れているのは、オフサイド奪取数だ。千葉は1試合平均のオフサイド奪取数が5.52回と極めて多く、J2トップ。対して岐阜は、1試合平均1.43回と、あまりオフサイドを取っていない。昨シーズンは平均2.67回だったので、むしろ岐阜は減った。
これはつまり、高い位置でボールを奪い返せなかったとき、千葉はラインを高いまま止めてオフサイドで切り抜けようとするのに対し、岐阜はラインを下げてDFがカバーにいき、解決を試みるためだろう。
千葉は最もアグレッシブな守備を実践しており、被プレー数の少なさがJ2でトップクラス(被ドリブル数2位、被ボールキープ数1位、被パス数1位)。徹底して相手にプレーをさせないサッカーをやっている。一方、岐阜は被ボールキープ数と被パス数が2位、被ドリブル数は6位。ボールを奪い返すカウンタープレスを重視してはいるが、相手に抜けられたときは、ゴールを守るカバーポジションを優先し、いったんラインを下げる傾向が強い。そのため、相手のプレー数が若干増えるようだ。
そのこと自体は問題ではないが、ただし、岐阜の失点パターンとして、セットプレーやクロスからの失点が多いことは気になる。中央に絞りながらラインを下げるので、カウンターからダイレクトに失点することは少なくても、その後の2手目、3手目で、相手がサイドに展開してからのクロス、あるいはセットプレーでの失点が増える。
低い位置で個々が跳ね返せず、失点につながってしまうのなら、そもそもラインを下げることに問題があるのかもしれない。あるいはラインの下げ方に問題があるのか、下げすぎているのか。クロスやセットプレーが脅威にならない位置でラインを止めることができれば、状況は変わりそうだが、それにはGKのカバー範囲もポイントになる。もちろん、そうしたチーム戦術に手を入れず、個人戦術の改善でクロスやセットプレーの失点を減らす方向性もあるだろう。さて、岐阜はこれからどんな道を歩むのか。
やって楽しい、見て楽しい、今年の岐阜サッカー。スタイルは劇的に変わったが、それがもっと勝てるサッカーに昇華するためには、まだ時間が必要なようだ。しかし、悲観することはない。57もあるJクラブの中で、最も試合中にボールに触っているのが岐阜である。何よりもその試合が、彼らの技術、体力を育ててくれるのではないか。
(テキスト:清水英斗、グラフィックデザイン:株式会社エコンテ)