菊池雄星、またもソフトBに勝てず 西武の“真のエース”へ試練は続く

中島大輔

ヤフオクドームのマウンドが合わない?

菊池(写真左)にとって、最後の関門がソフトバンク戦。次にヤフオクドームで投げるときは恐らくシーズンを左右するマウンドになるはずだ 【写真は共同】

 菊池はソフトバンクに勝てない――誰もがそう思い浮かべたに違いない。事実としてデビュー以来、ソフトバンク戦では0勝11敗となった。

 ただし、「ソフトバンクに勝てない」で済ませることはできない。5月19日の前回対戦では本調子でないなか、8回2失点に抑えている。だからこそ試合前、炭谷は「普通に勝てる」と自信を持って話した。

 当然ソフトバンクへの意識はあるだろうが、“別人”になった理由は他にも考えられる。

「(同じソフトバンク戦でも)メットライフドームではある程度(内容が)良くて、ヤフオクドームで悪いというのは、もちろんマウンドが関係しているだろうし」

 炭谷がそう振り返ったように、本拠地・所沢では今季2回の登板ともに試合をつくっているのだ。そう考えると、ヤフオクドームのマウンドが合わないのではないだろうか。

「名古屋とか神宮も初めてのマウンドで対応できていたので、そこは違うと思います」

 菊池はきっぱり否定したが、投手がマウンドのせいにするはずがない。事実、ヤフオクドームでは通算8度の先発で40回3分の1を投げて31失点、防御率6.92で6度の黒星を喫している一方、本拠地では42回で21失点、防御率3.64だ。傾斜があって硬いとされるヤフオクドームのマウンドでは、とりわけ苦戦を強いられている。

 それでも、手をこまねいているわけにはいかない。ソフトバンクは上位を争う相手であり、エースが負け続けていては逆転することなど不可能だ。

 正捕手の炭谷にそう振ると、立ち止まって答えた。

「ちょっと考えますね。例えば(今日唯一良かった球種の)カーブを連発するとか、方法があるのか。そこは(菊池と)話をしていかないとわからない。特にヤフオクで悪すぎるのでね、毎年毎年」

ソフトB戦で勝つことが最後の関門

 次回のソフトバンク戦は7月17日(月)からヤフオクドームと北九州市民球場で3連戦が組まれているが、菊池がオールスターで登板した場合、ここで投げることは考えづらい。8月4日(金)からの本拠地3連戦がリベンジの機会になりそうだ。

 先発ローテーションを大きく崩さない場合、敵地での対戦は9月28日(木)に予定される今季のカード最終戦かクライマックスシリーズで、いずれにせよ今季の行方をかけた大一番になるだろう。

 鳴り物入りで入団してから8年をかけ、ゆっくりと、一歩ずつ成長してきた菊池にとって、最後に残された関門がソフトバンク戦だ。今季どれだけいいピッチングをしたとしても、この山を乗り越えることができなければ、エースの称号を本当の価値あるものにすることはできない。当然、本人が誰よりわかっているはずである。

 そのための試金石が、8月上旬の対戦だ。ホームで勝利を飾り、苦手意識を払拭(ふっしょく)して、より強いプレッシャーのかかる敵地での対戦に挑めるか。

 次回の対戦では、菊池が本当の意味でエースになれるか否かが問われることになる。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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