長谷部誠が語る鈴木啓太とのステキな関係 「今も一方的にライバルだと思っている」

碧山緒里摩

忘れられないプロ初アシスト

長谷部のプロ初アシストは鈴木のゴールだった 【(C)J.LEAGUE】

 忘れられないゴールがある。

 自身が初アシストをマークしたゴールシーンである。03年4月19日、浦和駒場スタジアムで行われたJ1リーグ1stステージ第4節、京都パープルサンガ(現京都サンガF.C.)戦のこと。

 後半12分、右サイドを駆け上がったエメルソンのクロスはそのまま流れ左サイドへ。相手DFとルーズボールを追った長谷部がボールを確保し、中央へマイナスのボールを供給した。長谷部のラストパスをゴール前に走り込んだ鈴木がダイレクトで左足一閃。鈴木のプロ3点目となるこの得点こそ、長谷部のプロ初アシストだった。

「もちろんタイトルを取ったゲームもうれしかったのですが、啓太くんのゴールをプロで初アシストした京都戦もうれしかった。啓太くんが抑えたいいシュートを決めてくれました。自分の中で非常に印象に残っています。あの時はうれしくて、先輩なのに、首を絞める形になってしまいました(笑)」

違和感がなかった引退の決断

引退試合に参加できないことを残念がる長谷部。「引退しましたが今もライバルだと思っています」 【撮影:スエイシナオヨシ】

 ピッチ上で誰よりも走り、誰よりも汗をかいた鈴木は、15年シーズンをもって現役引退の決断を下した。不整脈に悩まされたこともあり、他クラブからオファーを受けながら、浦和ひと筋で現役を終える選択をしたのだ。早すぎる引退を惜しむ声も多かったが、長谷部には違和感がなかった。

「サッカー選手でなくても、さまざまな分野で活躍できる人だと思って見ていました。だから啓太くんはサッカーをやり切ると言うより、見極めてスパッとやめると思っていたんです。実業家の道を進むだろうと見ていました」

 現役を引いた今も付き合いは変わらないし、リスペクトの気持ちも変わらない。

「一方的にライバルだと思っていましたし、引退しましたが今もライバルだと思っています。啓太くんが何をするかすごい気になりますし、今後も刺激を与える存在であってほしいという思いはありますね。啓太くんはかっこいいですよ」

出たかった啓太くんの最後の晴れ舞台

 長谷部が尊敬してやまない鈴木が7月17日(月・祝)・埼玉スタジアム2002での引退試合に臨む。福田やギド・ブッフバルト、ロブソン・ポンテら浦和OBから、中村俊輔や松井大輔、細貝萌ら現役選手まで豪華メンバーが鈴木の最後の晴れ舞台に集う。

 その顔ぶれに、長谷部も「メンバーを見ると、懐かしい。僕も試合に出て、近況などを話せたらいいのだけれど」、フランクフルトの米国遠征のため、それはかなわない。

 鈴木は現在、走り切る体を作るため、トレーニングに余念がない。ストイックな彼のこと、引退試合のピッチでも、現役を彷彿(ほうふつ)とさせる姿を見せてくれるだろう。

 17年夏の埼玉スタジアムでもかっこいい鈴木が見られると思うか、最後に聞いてみると、長谷部は「それは間違いない」と微笑んだ。

 あれから21年、長谷部誠は鈴木啓太の性分を知っている。

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