ソフトバンク待望の正捕手へ――170センチ捕手・甲斐拓也の奮闘記

週刊ベースボールONLINE

盗塁阻止で大事なのは正確な送球

甲斐は「試合に勝ってピッチャーとマウンドで握手する瞬間は何よりの幸せ」と捕手の魅力を語る 【写真=BBM】

 先の日本ハム戦の矢のような送球に代表されるように、強肩を生かした送球は捕手・甲斐拓也の大きな武器となっている。6月13日終了時点で盗塁阻止率は5割。ランキングの対象となる『捕手としての出場試合数がチーム試合数の半数以上』に当てはまるほかの捕手たちを圧倒している。これこそがソフトバンクの正捕手レースの先頭集団を走る根拠だ。

――特長であるスローイングについて、技術的なポイントを教えてください。

 技術的にはまだまだ足りない部分があると思うんですけど、心掛けて徹底しているのは準備の部分です。例えば走者一塁の状況では、ピッチャーがセットポジションに入ったときに一度二塁ベースに目の焦点を合わせるんです。その状態でセットに入っている投手は視界にあり、ぼんやり見えています。その状態で、走者が走ったときの自分の動きをイメージして、「走ったらピッチャーのここに投げる」ということを行っています。一瞬の作業ですが、一度、そこで頭の中に入れておくと実際に走者が走ったときにイメージどおり動けばいい状態になっています。捕って早くという部分でそうした準備をしています。

――送球は正確性を伴うものである必要があると思います。

 そうですね。捕ってから投げるまでのスピードと、投げるボールの強さと送球の要素はありますが、第一は正確に投げることだと思います。正確に投げるために、どうしておかなければならないかを考えたときに、準備をしておかなければなりません。どんなに持ち替えが速くても、どんなに肩が強くても、投げたボールが逸れてしまえばセーフになってしまいます。そこで少し劣っても、走者が滑り込んでくるところのベースの角にさえ投げられればアウトにできる。そこが一番大事で、どれだけそれができるかだと思っています。

――捕手を始めたのは楊志館高時代だそうですね。

 高校1年生の秋でした。チームにキャッチャーがいなかったことで声を掛けられたんだと思います。本当にいきなり、練習が終わった後に(宮地弘明)監督から「明日からキャッチャーをやってみらんか」と言われました。うれしかったですね。キャッチャーは好きでしたから。

勝った瞬間の握手が何より幸せ

――170センチの身長で捕手を守ってきていますが、影響はありましたか。

 高校時代は何ともなかったのですが、プロに入ってからはサイズの違いを感じましたけどね。投手の的として小さくなることもあると思いますけど、ただ、この体だからできることもあるはずです。そこはプラス思考に考えています。

――捕手の魅力を今、どのように感じますか。

 きついことはたくさんあります。つらいことも、もちろん。大変なポジションですけど、一番はキャッチャーとして試合に出て、苦しい場面を乗り切って、試合に勝ってピッチャーとマウンドで握手する瞬間は何よりの幸せです。それが魅力だと思っています。

――1日の中で野球のことを考えている時間も長くなっているのでは?

 ずっとじゃないですか。ずっと考えています。何にも考えず、テレビを見ている時間とかないですからね。家に帰ってからもその日の試合の映像や相手の映像を見ています。野球以外に使う時間がないくらい。寝ていても野球の夢を見ています。ずっと野球です。そういう時間を持てていることが今、すごく幸せです。

――正捕手定着への期待もふくらみます。

 一番考えなければならないのは、チームが勝つことであり、優勝して工藤(公康)監督の胴上げに貢献できるようなキャッチャーになりたいです。1日1日が大切になりますし、1試合1試合が勝負なので、その瞬間、瞬間を大事にして必死にくらいついて、レギュラーのポジションを取れるように頑張っていきたいです。

(取材・構成=菊池仁志、菅原梨恵)

2/2ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント