ソフトバンク待望の正捕手へ――170センチ捕手・甲斐拓也の奮闘記
盗塁阻止で大事なのは正確な送球
甲斐は「試合に勝ってピッチャーとマウンドで握手する瞬間は何よりの幸せ」と捕手の魅力を語る 【写真=BBM】
――特長であるスローイングについて、技術的なポイントを教えてください。
技術的にはまだまだ足りない部分があると思うんですけど、心掛けて徹底しているのは準備の部分です。例えば走者一塁の状況では、ピッチャーがセットポジションに入ったときに一度二塁ベースに目の焦点を合わせるんです。その状態でセットに入っている投手は視界にあり、ぼんやり見えています。その状態で、走者が走ったときの自分の動きをイメージして、「走ったらピッチャーのここに投げる」ということを行っています。一瞬の作業ですが、一度、そこで頭の中に入れておくと実際に走者が走ったときにイメージどおり動けばいい状態になっています。捕って早くという部分でそうした準備をしています。
――送球は正確性を伴うものである必要があると思います。
そうですね。捕ってから投げるまでのスピードと、投げるボールの強さと送球の要素はありますが、第一は正確に投げることだと思います。正確に投げるために、どうしておかなければならないかを考えたときに、準備をしておかなければなりません。どんなに持ち替えが速くても、どんなに肩が強くても、投げたボールが逸れてしまえばセーフになってしまいます。そこで少し劣っても、走者が滑り込んでくるところのベースの角にさえ投げられればアウトにできる。そこが一番大事で、どれだけそれができるかだと思っています。
――捕手を始めたのは楊志館高時代だそうですね。
高校1年生の秋でした。チームにキャッチャーがいなかったことで声を掛けられたんだと思います。本当にいきなり、練習が終わった後に(宮地弘明)監督から「明日からキャッチャーをやってみらんか」と言われました。うれしかったですね。キャッチャーは好きでしたから。
勝った瞬間の握手が何より幸せ
高校時代は何ともなかったのですが、プロに入ってからはサイズの違いを感じましたけどね。投手の的として小さくなることもあると思いますけど、ただ、この体だからできることもあるはずです。そこはプラス思考に考えています。
――捕手の魅力を今、どのように感じますか。
きついことはたくさんあります。つらいことも、もちろん。大変なポジションですけど、一番はキャッチャーとして試合に出て、苦しい場面を乗り切って、試合に勝ってピッチャーとマウンドで握手する瞬間は何よりの幸せです。それが魅力だと思っています。
――1日の中で野球のことを考えている時間も長くなっているのでは?
ずっとじゃないですか。ずっと考えています。何にも考えず、テレビを見ている時間とかないですからね。家に帰ってからもその日の試合の映像や相手の映像を見ています。野球以外に使う時間がないくらい。寝ていても野球の夢を見ています。ずっと野球です。そういう時間を持てていることが今、すごく幸せです。
――正捕手定着への期待もふくらみます。
一番考えなければならないのは、チームが勝つことであり、優勝して工藤(公康)監督の胴上げに貢献できるようなキャッチャーになりたいです。1日1日が大切になりますし、1試合1試合が勝負なので、その瞬間、瞬間を大事にして必死にくらいついて、レギュラーのポジションを取れるように頑張っていきたいです。
(取材・構成=菊池仁志、菅原梨恵)