オリックス駿太が迎える勝負の夏! メンタルアップで定位置奪取へ

米虫紀子

響いた福良監督からの言葉

5月7日の日本ハム戦、この日4安打目となるライト前ヒットで試合を決めた 【写真は共同】

 また、オリックスの福良淳一監督からは、チャンスの場面での心の持ち方についてこうアドバイスされたという。

「チャンスの場面で、うちのチームの若い選手は、今から死にに行くような顔で打席に向かっている。そうじゃなくて、ここで打ったらヒーローなんだから、おいしい場面なんだから、笑顔で打席に立て」

 その言葉が駿太に響いた。

「昨年までは、技術のことばかり気にして、こういうふうに打たなきゃいけないとか、自分が思い描いた球がこなかったらどうしようとか、打てなかったらどうしようとか、そんなことばかり考えていた。だから手も出ないしどんどん追い込まれてしまった。でも、監督がそういう言葉をかけてくれるし、『それで打てなくてもしょうがない』と言ってくれる。だからやるしかないですよね。監督にはずっと、『気持ちを変えられるのは自分しかいない。誰も助けてあげられない』とも言われていました。僕自身がやらないと、いつまでも変われないなと思った。だから今年は考え方を変えようと意識しています」

 サヨナラ打を放った5月31日のお立ち台で、駿太は、「おいしいとこ持っていこうかなと思って打席に入りました。積極的に、(ストライクは)なんでも振ったろうと思っていました」とポジティブ思考が結果につながったことを明かした。

 以前は、少し安打が出なくなると考えすぎて深みにはまり、抜け出せないという悪い癖があったが、今年はシンプルに考えることを心がけ、調子の波を最少限にとどめてきた。結果を出すにつれ相手投手の攻めは厳しくなるが、それで苦しくなっても、こう考えた。
「ここで自分の調子が悪いと思ってしまったら今までの僕になってしまう。そうじゃなく、ピッチャーはいいところに、いいボールを投げてきているから打てていないだけ。だから甘い球をどれだけ逃さずに打つか、そこだけに集中しよう」

 そうやって悩みそうになる自分に歯止めをきかせた。

「出られる時に思いをぶつける」

 それでも、まだ“レギュラー獲得”とは言えない。相手の先発が右投手の場合に限った起用が続いているからだ。

 福良監督は、相手投手の右左によって打線を組み替え、左投手に対してはT—岡田を除きすべて右打者を並べることが多い。左打者の駿太は、たとえ前の日に3安打しても、次の日の相手投手が左の場合は先発を外れる。複雑な思いはあるが、対左の打率が2割に満たない(17打数3安打)という現実もある。

「そこはチーム状況や監督の方針もあるので、ぐっとこらえて、出られる時にその思いをぶつけるしかない。早く信頼を勝ち取って、どちらでも出られるようになりたいですね」
 加えて、4月下旬に左膝大腿骨骨挫傷で戦線離脱していた4番のステフェン・ロメロが5月30日に1軍復帰し、獲得したばかりのクリス・マレーロも早速長打力を発揮。競争相手が増え、右投手の日でも駿太のスタメンが約束されているわけではない。

 一方で、コンディションは上がっている。本来4、5月は駿太の苦手な季節で、夏に近づくほど体が動き出す。今年も、「(5月30日から始まった)交流戦までは、『うわーちょっとだりーな』って感じで、無理矢理体を動かしていたんですが、交流戦に入ると急に体がスーッと楽になりました」と語っていた。

 入団7年目、24歳の夏はレギュラー獲りへの正念場となる。チームの中心選手となるために、ここが踏ん張りどころだ。

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著者プロフィール

大阪府生まれ。大学卒業後、広告会社にコピーライターとして勤務したのち、フリーのライターに。野球、バレーボールを中心に取材を続ける。『Number』(文藝春秋)、『月刊バレーボール』(日本文化出版)、『プロ野球ai』(日刊スポーツ出版社)、『バボちゃんネット』などに執筆。著書に『ブラジルバレーを最強にした「人」と「システム」』(東邦出版)。

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