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ナダルに敗れた次代の「赤土の王」
23歳ティエム、真のトップへの階段

「赤土の上では世界ナンバー2」との評価も

試合後、健闘をたたえ合うナダル(左)とティエム
試合後、健闘をたたえ合うナダル(左)とティエム【Getty Images】

 子供のころから慣れ親しんだクレーを最も得手とするティエムが、今や「赤土の上では世界ナンバー2の選手」と評されるまでになったのは、今季のバルセロナオープンとマドリード・マスターズの準優勝、そしてローマ・マスターズベスト4の好成績によるものだ。なおバルセロナとマドリードでいずれも彼の前に立ちはだかったのは、ラファエル・ナダル(スペイン)。テニス史上最強の“赤土の王”である。


 ただそのナダルにも、ローマ・マスターズでは準々決勝で雪辱を果たした。試合立ち上がりからフルスロットルで走る挑戦者の勇気と闘争本能は、観客を引き込み、王者をも飲み込んでいく。ボールに飛びつき右腕を全力で振り抜く姿は、鷹が上空から獲物めがけて急降下するかのような、躍動感と勇猛さをたぎらせていた。


「今日は彼が全ての面で素晴らしいプレーをした。ものすごく攻撃的で、ボールを強く打ち抜いた」


 試合後にナダルも称賛するしかない、ティエムの圧巻のプレーであった。

「赤土の王」ナダル戦 響いたコートの違い

ナダル戦に敗れ、悔しげにコートを引き上げるティエム
ナダル戦に敗れ、悔しげにコートを引き上げるティエム【Getty Images】

 ただしそのローマから3週間後のパリでは、ナダルに王者の力を見せつけられる。全仏のセンターコートはローマのそれよりもベースライン後方のスペースが広く、ティエムの強打をもってしても、下がって打ち返すナダルの守備を崩せない。なかなかポイントを決められないティエムは、より強く打ち、より際どいコースを狙うが、多大なリスクを乗せたボールは徐々に、ラインを逸れるようになっていった。


「今日は、自分の力を出しきることができなかった」


 3−6、4−6、0−6のスコアでの敗戦に、試合後の彼は失意を隠せない。ただそれでも、ナダルの「彼は今大会初めてセンターコートで戦ったので、慣れていなかったのだろう」という言葉がありながらも、本人は「それが影響したとは思わない」と言い訳にはしなかった。


 今大会でのジョコビッチ戦の勝利によりティエムは、アンディ・マリー(イギリス)、ジョコビッチ、ナダル、そしてロジャー・フェデラー(スイス)の“ビッグ4”に加え、現在のトップ4であるスタン・ワウリンカ(スイス)の全員から勝利を手にした。誰をも破る力が自身にあることは、本人が誰より良く知っている。次のステップは、その力をどれだけ安定してコート上で発揮できるか……。


「継続性を獲得しなくてはいけないし、できるとも思っている。時間が解決してくれるさ」


 近い将来、真のトッププレーヤーになれることをも、彼は確かな実績とともに確信している。

内田暁

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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