恐れを知らぬ現代の開拓者ハーパー 素質とビッグマウスでMLBをカラフルに

杉浦大介

今季最大級の乱闘の主役

死球を発端に大乱闘となったハーパー(34)とストリックランド 【写真:Getty Images】

 MLBの風雲児、ナショナルズのブライス・ハーパーが今季も多くの話題を振りまいている。最新の波乱のエピソードは5月末のこと。5月29日(現地時間)のジャイアンツ戦でハンター・ストリックランドから死球を浴びると、激怒したハーパーがマウンドに駆け寄り、今季最大級の乱闘の主役になったのだ。

 ヘルメットを投げ捨てたハーパーがストリックランドに殴りかかると、あとは大混乱。ダークサイドに落ちたアナキン・スカイウォーカーのようだったハーパーの顔つきもインパクトが大きかった。メジャー屈指のスーパースターが大暴れした映像は、アメリカ国内でも繰り返し流される顛末になった。

「可能な限り早くラインアップに戻りたかった。(出場停止を)先延ばしにしたくはなかった。地元ではプレーしたいし、ロサンゼルス(ドジャース戦)でのゲームを休みたくなかった。重要なシリーズだからね」

 この試合後に3試合の出場停止処分を受けたハーパーは、6月4日のアスレチックス戦で復帰し、試合前にはほとんど悪びれずにそうコメントした。そして、フィールドに立つと、ジャイアンツのホームからほど近いオークランドのファンから盛大なブーイングを浴びた。

 ストリックランドは2014年のプレーオフでハーパーに2本塁打を許した経緯がある。本人は例によって意図的であったことを否定しているが、いわば“逆恨み”の死球だったことは明白。そんな経緯からハーパーには同情論も多かったものの、オークランドの観客は容赦しなかった。

若い頃からエピソードには事欠かず…

 こんな事件は象徴的なのかもしれない。ハーパーが何をしようと、何を言おうと、大きなニュースになる。ハーパー本人はブーイングも意に介さない。24歳のスラッガーは、話題の中心になることを宿命づけられた選手なのである。

 まだ16歳だった09年6月、“選ばれし男”と銘打たれて『スポーツ・イラストレイテッド』誌の表紙を飾ったのがハーパー伝説のスタートだった。

 10年のドラフト全体1位でナショナルズに入団すると、12年に19歳でメジャー昇格し、いきなり22本塁打で新人王を受賞。15年には打率3割3分、42本塁打、99打点という見事な成績を残し、22歳にしてMVPも獲得した。

 昨季こそ不振に悩んだが、今季も6月8日時点で打率3割2分5厘、15本塁打と好スタートを切っている。そのバネの利いたスイングとバットスピードを見れば、素質は一目瞭然。エンゼルスのマイク・トラウトともに、これから10年以上もメジャーリーグを背負っていくであろう逸材であることは間違いあるまい。

 このように能力が飛び抜けているだけでなく、ハーパーは早くからビッグマウスとして知られてきた選手でもある。マイナー時代にホームランを打った相手投手に投げキッスし、ルーキー時から大言壮語するなど、生意気な態度に関するエピソードは数知れず。そのおかげもあって、メジャー昇格直後には当時フィリーズのエースだったコール・ハメルズから威嚇目的の死球を浴びたこともあった。

 鼻っ柱の強さは一部のチームメートの神経も逆撫でするようで、15年には当時のチームの守護神だったジョナサン・パペルボンと自軍ベンチでゲーム中に大乱闘。昨年5月にはアンパイアへの暴言で1試合の出場停止処分を受けたこともあった。これらの豊富なヒストリーがあったゆえに、最新のストリックランドとの一件は派手ではあったが、誰にとっても驚きではなかったのである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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