“考える野球”が和歌山大の真骨頂 初出場の全国で国立旋風なるか!?

松倉雄太

和歌山大は大原監督(左)が全幅の信頼を寄せる眞鍋主将の下、“考える野球”を実践し、初のリーグ戦優勝を果たした 【写真は共同】

 近畿学生野球連盟で15連覇中だった王者・奈良学園大をリーグ戦最終週で破り、1950年の連盟加盟以来初優勝。大学選手権初出場を果たした和歌山大。同連盟では、国立大学では2009年春の大阪教育大以来の優勝で、和歌山県の大学では唯一の硬式野球部を持つチームである。08年に大原弘監督が就任した時は3部に降格していた。そこから一歩ずつ階段を駆け上がり、昨秋は65年ぶりの2位。全国を狙えるところまで力をつけてきた。

息を吹き返した指揮官の言葉

 今季は、第1節の大阪市立大の第2戦、第2節の神戸大の初戦で連敗。スタートにつまずいたと思われたが、4月21日に大原監督は選手たちに聞いた。

「今日が何の日か知っているか?」

 怪訝な表情を見せた選手たちに、指揮官は続けた。

「第66回全日本大学選手権の抽選日だ。近畿学生の代表はシードで、関西学生と中国地区の勝者と対戦する。この舞台を目指してやっているんだろ!」

 この言葉でチームは息を吹き返した。

4安打で6得点、3安打で4得点

近畿学生野球連盟の最終週、15連覇中の奈良学園大から連勝で勝ち点を奪い、全国の切符を手に入れた 【松倉雄太】

 翌日の4月22日から地元・紀三井寺球場で行われた第3節の大阪大戦を連勝。さらに1勝1敗で未消化だった第1節の大阪市立大学との3回戦を勝ち、勝ち点2。「地元の和歌山で3連勝できたことが大きかった」と大原監督は振り返る。王者・奈良学園大は第2節で勝ち点を落としており、自力優勝が狙える位置にいた。

 最終節、大学日本代表の宮本丈(4年・履正社)を擁する王者との直接対決。5月14日の1回戦では4安打ながら6点を奪い勝利。17日の2回戦でもわずか3安打で4点を挙げて連勝。見事に初優勝を果たした。

 この、4安打で6点、3安打で4点が和歌山大の真骨頂。主将の眞鍋雄己(4年/高川学園)は、「いつの間にか点が入っている。これが僕たちの野球です」と話す。試合では眞鍋を中心に選手たち自身で“考える野球”を実践。ほとんどがノーサインだ。指揮官がスクイズかと思っていても、選手たちが阿吽(あうん)の呼吸で『ゴロGO』を選択して1点をもぎとる場面もあった。

2年秋からの主将に全幅の信頼

 大原監督は眞鍋を2年秋に主将に指名した。きっかけは星稜高(石川)の山下智茂元監督が昔、秋の新チーム結成時に1年生を主将にしていたことだった。

「最上級生が主将だと、チームが良くなってきた時に卒業になってしまう」

 行動力、発言力のある眞鍋に練習も任せた。他部と併用のグラウンドを使っての全体練習は週4日と制約があるため、早朝を利用しての自主練習を提案したのも眞鍋だった。授業の合間にも可能な限り体を動かすことも始めた。「ゲームの中でも彼が監督。人間的にも素晴らしく、彼が4年生になるときを意識してきた」と大原監督は主将に全幅の信頼を置く。

 初の大学選手権。「選手たちを誇りに思います。夢のようです」と語る大原監督。主将の眞鍋は、「食らいつきたい」と意気込みを見せた。初戦の相手は、5日の1回戦で近畿大(関西学生野球連盟)に4対2と勝利した150キロ右腕・近藤弘樹を擁する岡山商科大(中国地区大学野球連盟/試合は7日・神宮球場9時開始〜)に決まった。部員全員でこの一戦を見届けると、大原監督は「頑張ります」と決意を新たにした。神宮の舞台でも持ち味の“考える野球”を存分に見せるつもりだ。
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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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