錦織圭、成長とともに訪れた意識の変化 「自分のため」から「日本のため」へ

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西岡、ダニエルら“チーム日本”全体で成長を

初めてトップ10入りしてから3年。自身の立場の変化を少しずつ感じ始めている 【坂本清】

 世界のトッププレーヤーとしての地位を固めた今、錦織の立ち位置は追う側から、追われる側へと変わりつつある。特に、22歳のニック・キリオス(世界ランキング19位)ら勢いある海外の若手が台頭し「自分の位置を守らないといけないという、“新たな戦い”は若干あります。上だけを見ていられないのも感じます」と危機感も口にする。

 その中には、同じIMGアカデミー出身の西岡良仁や、リオ五輪でともに戦ったダニエル太郎ら、日本の若手選手もいる。下からの突き上げを感じながらも、ふるさとから遠く離れ躍動する同士には、少し違った思いがある。

「今はけがこそしましたけど西岡選手や、ダニエル選手らも上がってきているので、そういうのは見ていてうれしいです。なるべくみんなで盛り上げながら、みんなでランクが上がってくれたらうれしいですね」

「自分のため」にプレーしていたテニスが、成長とともに次第に周りの人のためにもなり、“チーム日本”全体の成長を願うようになった。柔らかな語り口調とは裏腹に、今の錦織には、日本のエースとしての気概が一段と感じられる。こうした意識の変化は、日本人プレーヤーの可能性を切り開いてきた先駆者が、次なる高みへと進もうとしていることの表れではないだろうか。

子どもたちには「諦めない心を」

27歳になった錦織。未来の日本テニス界を担う子どもたちにどんな思いを抱いているのか 【坂本清】

 日本テニス界のけん引役としての自覚を強める錦織に、聞いてみたいことがあった。錦織のようなトッププレーヤーを夢見る子どもたちの、海外挑戦についてである。国際競争力の向上のために、若いうちから海外で武者修行を積むべきだと考える指導者は多い。一方で、海外の練習方法や生活になじまない子もいるだろうし、送り出す側には経済的負担も大きく、相当の準備と覚悟が必要だ。異国の地で自らを鍛え、トップレベルに駆け上がった本人は果たして、どんな考えをもっているのか。

「海外に来るのはすごく賛成です。特にヨーロッパはテニスが盛んだし、強い選手もそこら中にいるので、そういう点では切磋琢磨(せっさたくま)できる。余裕があれば海外に来るのが一番だと思います」

 そう口にした後、一瞬の間を空けてこう付け加えた。

「でも、日本でできないこともない。良いコーチと諦めない心があれば大丈夫だと思います」

 盛田ファンドから全面的な支援を受け、この上ない練習環境を与えられた自分がいかに恵まれていたか、錦織はよく分かっているのだろう。そして、そんな環境を手にすることのできる人はごくわずかしかいないことも、十分承知している。だからこそ、まずは自分のいる場所でベストを尽くしてほしい――。錦織のメッセージが、将来の日本テニス界を背負うであろう子どもたちへの温かなエールとなることを願っている。(文中敬称略)

(取材・文:小野寺彩乃/スポーツナビ)


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