遅咲きの新星・大橋悠依が2冠達成 女子競泳界に現れた平井コーチの秘蔵っ子

スポーツナビ

才能を見逃さなかった平井コーチ

 地道なトレーニングを積み重ねる根気強さを持つ大橋だが、平井コーチが期待を寄せる理由は彼女の素質にもあった。

「背泳ぎがもともと得意な選手で、世界のトップとまではいかないですけれども、日本のトップにはなれると思います。掻くストロークもゆっくりとしたテンポで、きっちりと水を捉えるもともとの素質がありました」(平井コーチ)

得意の背泳ぎは、平井コーチも「日本のトップになれる」とその実力を認める 【奥井隆史】

 平井コーチがその輝きを初めて目にしたのは、2012年のジャパンオープンだった。「2バック(200メートル背泳ぎ)をすごくゆったりと泳いでいて素質がありそうだなと思った」と話す平井コーチは、直後のジュニアパンパシフィックの背泳ぎで大橋にとある“テスト”を行った。

「200が全然良くなくて……。最終日に競技がなかったから400も泳がせてみたんです。そしたらベストを出した。細くて水を捉えるのがうまいので、400ぐらいのゆったりとした泳ぎの方があの時点では合っていたんだと思います。すぐに勧誘に行きました」(平井コーチ)

 こうして、平井コーチのもとで本格的な練習を開始した大橋は急成長を見せた。

「実は大学1年生の時に一気にいきそうになった時があったんです」(平井コーチ)

 しかし、予期せぬ事態が大橋を襲った。大学の食堂で膝をぶつけ、けがを負ってしまったのだ。これがなければ「もっと早く開花していたと思う」と平井コーチは振り返る。だが「ナーバスなときに記録だけ伸びるよりは、苦労して今落ち着いている方がいい」と続ける。

「地道な筋力トレーニングや水中の頑張りで、テンポを上げてもきちんと水を捕まえることができるようになった。特に最近はバタフライの伸びが著しく、平泳ぎもだんだん上手になってきて、そつのない4種目で大きなストロークでテンポを上げられるようになったところが記録短縮の要因だと思います」(平井コーチ)

 それでも、世界水泳での目標設定には平井コーチも慎重だ。大橋の今後に期待を寄せつつも、焦りは見せない。

「今年に関しては正直そんなに甘いものだとは思っていません。(世界水泳では)確実に決勝に残って、勝負してくれればいいなと思います。将来的には、前半から積極的に行けるところが彼女の武器なので、もう少しバタフライと背泳ぎを磨いて、平泳ぎのラップをあと1秒から2秒縮められれば、金メダルまで行くかは分かりませんが、良い色のメダルは狙えるかなと思っています。それぐらいの素質がある選手だと思っているので、大事に指導していきたいなと思います」(平井コーチ)

 その実力は平井コーチのお墨付きだ。今後、大舞台での経験を重ねていく中でどのような成長を見せてくれるのか。開花の時期を迎えた21歳の泳ぎに注目したい。

(取材・文:澤田和輝/スポーツナビ)

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント