マーリンズ首脳陣が田沢に期待する役割 新天地での初登板は苦しいピッチングも…

丹羽政善

田沢の登板が増えればチームも好調の証し

今季2度目の登板も一発を浴び1回1失点だった田沢 【写真は共同】

 1年を通して考えれば、マーリンズの考えも間違ってはいないのかもしれないが、不安な部分が、開幕の、しかも試合を決める一発につながったのは皮肉。あの日の試合後、「左投手がいたらと思ったのでは?」と地元記者に聞かれたドン・マティングリー監督も、「正直に言えば、(左が)いたらと考えた」と話している。

 そこにわずかながら本音がのぞいたわけだが、とはいえやはり数試合で是非を判断することは難しく、当面はこの方針に変更はない見込み。となれば田沢は、これからも開幕戦のように終盤の左打者が続く場面でもマウンドに上がることになる。実際、開幕3戦目(6日)――彼にとって今季2試合目の登板もまた、ハーパー、マーフィーと続く同点の8回という、試合の行方を左右しかねないしびれる場面だった。

 むろんそれは、裏を返せれば彼に対する期待の表れでもある。またレッドソックス時代、ジョン・ファレル監督の起用に振り回されてきた田沢にしてみれば、むしろ役割が明確で、やりやすさがあるのではないか。ボストン時代の田沢の印象についてイチローは、「毎日投げてる。そんなイメージですかね」と話していたが、今年はパターンが見えつつある。

 チームもそんな場面での登板を前提に獲得した。マーリンズの先発陣は全員が先発3番手というレベルであり、よって継投がカギになる。そのために田沢、ジーグラーと契約してブルペンの層を厚くしたのだ。中盤までリードすれば、田沢らはフル回転することになり、彼の登板数が増えれば、チーム状況も悪くはないという一つのバロメーターになりえよう。どうだろう、9月に入って、彼の登板数が80試合に達しようとしているなら、マーリンズはそのときプレーオフ争いをしているのではないか。

 もっとも、この2試合に限れば、田沢は期待に応えられていない。6日の登板では、ハーパー、マーフィーを抑えながら、2死からライアン・ジマーマンにセンターへ勝ち越し本塁打を許した。田沢は試合後、「ストライクが入らなかった前回に比べれば、進歩といえば進歩ですけど、あそこは打たれたらいけない場面」と厳しい表情。「もう少し外に投げるとか、もう少しボール気味にしたほうが良かったのかな」とも話し、悔しさを隠そうとしなかった。

 ただ、その一方であの日は、「投球自体は悪くなかった」と手応えも感じていた。ならばその感覚をしっかりとたぐり寄せて、安定につなげたいところ。まずはなにより、きっちり抑えて、リズムに乗っていきたい。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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