好調ホッフェンハイムを支える「脳トレ」 29歳ナーゲルスマン監督の目指すスタイル
判断スピードの改善が大きな伸びしろ
ナーゲルスマンの練習は頭を使うものが多く、テクノロジーの活用にも熱心だ 【Getty Images】
その鍵は「脳トレ」にある。ナーゲルスマンは、『キッカー』誌のインタビューでこう語った。
「サッカーには認識や判断のスピードに、大きな成長の余地がある。いかに情報処理の能力を上げ、正しい判断を下すかだ」
ナーゲルスマンの練習は、頭を使うものが多い。たとえばミニゲームにおいて、ボールを奪った選手がそのままゴールを決めたら5ポイント、奪ってから縦パスの連係で得点したら3ポイント、それ以外は1ポイントというルールを設定。ゲーム終了後、ナーゲルスマンは各選手に「合計何点だったか?」を質問する。間違えたら罰ゲームとして腕立てだ。重圧下での思考スピードを鍛えるための工夫である。
ホッフェンハイムのスポーツ心理学者、ヤン・マイヤーによると、「ピッチ上の90%のアクションは潜在意識下で行われている」という。残りの10%が、判断の部分だ。つまり「その10%がプレーを改善するうえで大きな伸びしろになる」ということである。
そこでナーゲルスマンは週に1回、サッカーの授業を行っている。「攻撃のとき、いかに相手のマークの影に隠れないか」といったテーマを毎週設定し、ビデオ教材を用意。15分間のディスカッションタイムも設け、選手たちにある局面での打開策を質問して議論させる。大学のゼミのようなノリだ。強制ではなく自由参加で、好きなテーマのときに出ればいい。
テクノロジーを使った独自のトレーニング
テクノロジーを活用するなど、オリジナルのスタイルを目指すナーゲルスマン監督 【写真:アフロ】
他には180度の巨大スクリーンでゲームを行う「Helix」も開発しており、テクノロジーを使ったトレーニングはさらに発展していくだろう。ナーゲルスマンは自分が最も影響を受けたサッカーとして、「ジョゼップ・グアルディオラ時代のバルセロナ」を挙げている。ポゼッションにこだわるうえに、ボールを失ったらすぐに奪うスタイルに魅了された。だが、「それをコピーするつもりは一切ない」。自分オリジナルのスタイルを創造するつもりだ。
トーマス・トゥヘル監督とドルトムントの契約が18年夏まで、カルロ・アンチェロッティ監督とバイエルンの契約は19年夏までで、彼らの後任としてナーゲルスマンの名前が挙がり始めた。
29歳のシンデレラストーリーは、まだ序章にすぎない。