田中将大、防御率23.63からの出発 予想外の乱調に本人も監督も落胆

杉浦大介

特別な雰囲気が漂う開幕戦

自己ワーストの自責点を喫した田中は「すごく悔しい」と振り返った 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 もっとも、まだ1試合。MLBの長いシーズンはまだ始まったばかりである。初戦の投球内容がメジャーキャリアでもワースト級だったからといって、現時点で大げさに騒ぎ立てるべきではないのだろう。

「普段の田中はほとんど四球を出さないのに、今日は変化球も決まっていなかった。田中と(クリス・)アーチャーが投げるのだから、試合前には3対1、3対2くらいのスコアになると思っていた。ただ、全選手にとって今季初戦だったのだから、何かを言うのは難しいよ。僕も今日は1日中ナーバスになって、感情的になってしまっていたからね」

 この日、初回にチャンスを広げる貴重な二塁打を放ったレイズのケビン・キーアマイヤーも田中に同情的だった。

 開幕戦は単に“162分の1”と表現するものもいるが、実際にはそこに特別な雰囲気が漂っているのは紛れもない事実。一方で実践のプレーに関してはまだ手探りの部分も多く、だとすれば少なからず不安定になるのも、浮き足立つのも仕方ない。試合後、3年連続の開幕投手ながら、依然として独特の緊張感を感じたことを田中も認めていた。

「(今日は)何もできなかった。探りながらやったが、余りにもいろいろな部分で制御が効かなかったのでこういう結果になってしまった。(初回に)立て続けに1、2番にぽんぽんと打たれて、あそこからおかしくなった」

 今春は絶好調が伝えられ、特にこれまで稀有な適応能力を発揮してきた投手だけに、その崩れ方はやはり意外ではあった。ただ、今日の試合で修正が効かなかったことを、次のゲームへの反省にすれば良い。メジャーのシーズンではある程度は長い目の仕上げが許されるし、これまで着実に実績を積み上げてきた田中に関してはなおさらだ。

 次は4月8日のオリオールズ戦に先発予定。開幕戦という1日限りの祭りは終焉(しゅうえん)し、MLBは通常のレギュラーシーズンに戻っていく。この先、田中が普段通りの安定感と適応力を誇示するための時間はまだたっぷりある。“防御率23.63”からの再出発になるが、それでも“メジャーでの自己最高のシーズンへ”との希望は消えたわけではないのだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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