20年に向け、男女セブンズが抱える課題 強化委員長が語る今後の強化方針とは?

スポーツナビ
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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

 本城氏の講演に続いて、来場したファンからの質疑応答が行われた。以下はその要旨。

「代表チームが強くなることが一番のマーケティング」

来場したファンからの質問に答える本城氏(右) 【スポーツナビ】

――男子代表のダミアン(・カラウナ)HCを選んだ理由は?

(前任の瀬川智広HCには)最大級の賛辞を送りたいし、評価もしています。一方で(リオ五輪では)メダルを目標にしていて、そこに手が届かなかったのも事実です。五輪ではトップ3との差を実感しました。そこをどう乗り越えて新しいステージに行くかというときに、新しい風を送り込みたいという思いがありました。

 日本人だから、外国人だからという物の見方はしていません。これまでも、どういうラグビーをやったら世界と戦えるかということを手探りながら一生懸命勉強して、考えながらやってきました。まだ気付いていないことがあるのなら、手遅れにならないうちに、きちっと理解しておくべきだと。そういう意味で、新しい視点を入れる必要があると思いました。

――15人制より7人制に向いていると思うのはどんな選手か?

 一言で言えば、「15人制ラグビーで一番すごい選手」ですね(笑)。体が大きくてスピードがあって、相手を抜く力もあって、パスもうまい――。ただ、そんな人は世界中を見てもなかなかいない。ですから、ある部分をどうチョイスして、チームの中でどう生かしていくかということが大事になってきます。その中で、強いてあげるなら、スピードが一番重要ですね。チーム全員がすごく足が速い選手である必要はないですが、一定の水準はクリアしなければいけないと思います。

――セブンズを広めることに関して、広報活動が足りないのではないか。

 ご指摘の通りだと思います。予算との兼ね合いがあるのも事実ですが、強化と普及(広報活動)は両方大切なことだと思っています。両輪で回していくことが重要ですが、あえて優先順位をつけるならば、僕は強化が先だと思っています。

 代表チームが強くなることが一番のマーケティングだと思っています。活躍している選手を見て「あんな選手になりたい」「五輪に出たい」というふうに多くの子供たちが思ってくれるかというところで、その後が変わってくる。

 普及というと「大会を作る」というような話がよくでてきますが、単発的な大会から得られるものは少ない。大会を作るなら、その大会の意義は何かというのをきちんと位置づけて、そこからどう広がりを持たせていくかを設計することが重要です。

「いずれセブンズと15人制を分ける必要がある」

――リオ五輪では惨敗した女子代表に関して、選手やコーチはどのような反省をしているか。

 ラグビーというのは人間力を問われるスポーツだと思っています。人間の持っている能力をフルに使うスポーツで、体もそうですし、頭もそうです。だから人間力をどう磨いていくかがすごく大事です。そう考えたときに、1年のうち240日以上を練習に費やすという、今までのようなやり方が本当にいいのかどうかについては立ち返るべきだと思っています。

 また、女子は男子と比べても海外のチームとの体格差、スピードの差が歴然としています。オーストラリアの選手と比べると、平均身長が10センチ、平均体重も10キロくらい劣っている。スピードの差も歴然としていて、日本で一番速い選手がオーストラリアの平均だったりするわけです。そこの差を埋めていくのは不可欠です。もちろん最後の勝負で気高く勝つことも大事ですが、そこを上げていかなければ戦えない。それは競技力自体をどう上げていくかという点と、運動能力の高い選手をスカウティングしてきて、セブンズでプレーしてもらうのかという、先ほどの話につながっていくと思います。

――男子の国内サーキット大会を作るのはどうか。

 すぐには難しいと思います。なぜならば、国内にセブンズのチームがほとんど存在していないからです。女子代表は五輪で正式種目になったことで、セブンズに軸足を置いたチームが複数できました。男子は『サムライセブン』と『PSI』くらいでしょうか……。ですから、そういった大会を作ったところで、それがどのくらい強化・普及につながるのかというのは未知数です。

 ただし、将来どうするかというところは考えなくてはならないと思っています。これは20年よりもっと先の話になると思いますが、セブンズと15人制をどこかのタイミングで競技自体分ける必要があると思っていますし、その時はやはり「プロリーグを作る」ことかなと。その勉強はし始めているところです。

 ただ、それは簡単なことではありません。プロリーグであれば収益性も大事。ビジネスとして本当にそれが成り立っていくのかをきちんと整備しなければ、選手に給料が払えないしチームも存続しない。(選手の)セカンドキャリアをどう設計するのかという問題もセットで考えておく必要がある。しかし、15人制と競技をセパレートするか否か。そこは避けては通れない話だと思います。

あなたにとってラグビーとは?

本城氏はラグビーについて「人間形成や物事を考えるときに影響を与えてくれた」と語る 【スポーツナビ】

 幼い頃にラグビーと出会い、高校生でプレーを始め、現役引退後も企業人としての人生を送る一方で、コーチや今のような立場(男女7人制強化委員長)で携わり、常に自分の生きていく世界にありました。ラグビーで培ったものは、仕事でも良い影響をもたらしてくれていますし、またラグビー関連の仕事に当たる際も、企業人として得たものが生かされていると思っています。

 人間形成や人格形成に影響を与え、物事を考える時の指針も示してくれました。私にとってラグビーは「師」であり、「パートナー」であり、「バックボーン」ですね。

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