稀勢の里と高安、躍進生んだ相乗効果 兄弟弟子の”絆”は言葉いらず
弟弟子・高安の援護射撃で連覇
2場所連続優勝を果たし、パレードを行う稀勢の里(右)と旗手を務めた高安 【写真は共同】
「すごいの一言です。本当に感動した。ありがたいです」
表彰式が終わると1月場所に続き、高安は“主役”とともに“旗手”としてオープンカーに乗り込み、パレードを行った。初優勝した1月場所を「高安のおかげ」と振り返る稀勢の里。弟弟子が横綱白鵬を破ったことが結果的に、兄弟子の初賜盃の援護射撃となった。そして今場所も本割、決定戦と稀勢の里が相対した大関照ノ富士に、高安が6日目に土をつけたことで、新横綱Vを呼び込んだ。まさに稀勢の里の連覇は、兄弟弟子の強い絆がもたらしたと言えるだろう。
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めっきり減った2人の会話
「高安が大関を狙える力がついたのは稀勢の里のおかげだけど、稀勢の里にとっても高安の力を引き上げつつ、自分の稽古にもなったはず。そのおかげで横綱になれたのは間違いないでしょう」と話すのは、2人が所属する田子ノ浦部屋付きの西岩親方(元関脇若の里)だ。
互いが互いを認め合う存在ながら、実は稽古場で2人が会話をする光景はもう何年も見られない。稀勢の里が直接、高安にアドバイスを送ることもない。さらに稽古後はそれぞれ2人が別々に記者に囲まれたり、それぞれの関係者と談笑したり記念撮影に応じたりと、兄弟弟子同士の絡みはなかなかない。
「関取になると一人前。細かいことを言われるのは嫌だなと自分は思っていたので」と西岩親方。現役時代は自身の付け人を務めていた10歳年下の稀勢の里(当時は萩原)に、相撲のイロハをたたき込んだが、やがて自分のもとを巣立ち関取に昇進すると、もう何も言わなくなった。ただし、ぶつかり稽古では大兄弟子が元気なうちは、弟弟子が関取になっても胸を出し続けた。普段の会話はめっきり減ったが、体と体をぶつけ合うだけでお互いに何かを感じ取っていた。