プエルトリコとオランダが決戦前に調整 一体感と成熟度を高め準決勝の舞台へ

永塚和志

ジャンセンもチームに合流し、準決勝の舞台ドジャー・スタジアムでオランダ代表が練習を行った 【写真は共同】

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝ラウンドを翌日に控え、現地時間20日に準決勝の第1試合を戦うオランダ代表とプエルトリコ代表が試合会場のドジャー・スタジアムで練習を行った。

 強い日差しが降り注ぐ南カリフォルニアらしい天候の中、タイトなスケジュールで激戦を戦ってきた両軍とも2時間ほどの練習の大半を軽めの調整に当てた。

 プエルトリコとオランダはWBCでこれまでに3度対戦し、いずれもプエルトリコが勝利している。とはいえ3試合とも2006年と09年大会での話で、それから両国の状況はかなり変わってきているため、さほど参考にはならないだろう。プエルトリコのエドウィン・ロドリゲス監督も「過去の戦績はまったく意味をなさない。毎年チームの状況は違うもの」と“今”を見据えるコメントをしている。

4年前から総合力アップ

 前回大会でもベスト4に進出した両軍ではあるものの、ともにこの4年間で総合力や成熟度を高めており、自信を深めている。

 ロドリゲス監督は「われわれは13年とはまた違う新たなバージョンのチーム。以前とは比べ物にならないほど積極的に打ちに行くし、投手陣も先発、ブルペン陣を問わず素晴らしい選手に恵まれている。全体的により豊富なタレントを備えていると言える」と力強く話す。

 プエルトリコが今大会で最もホットなチームであるのは間違いない。大会初戦で強豪ベネズエラに11対0のコールド勝ちを収めると、そこから破竹の勢いで全勝街道を走ってきた。前回大会では決勝でドミニカ共和国に敗れたが、今大会の2次ラウンドではそのドミニカ共和国に勝利しており、4チームの中で優勝に最も近い存在だと言っても過言ではないだろう。

 対するオランダはここまで2敗を喫しているものの、東京での2次ラウンドの最後の2試合でコールド勝ちを収めるなど、大会が進むにつれてとりわけ攻撃面で調子を上げている。また4年前と比べてメジャーリーグでレギュラーに定着する選手が格段に増えるなど経験値も上げており、プエルトリコとも十分伍することができると感じている様子だ。

 13年大会の準決勝でも全勝のドミニカ共和国を迎え敗れた。今回再び、同じベスト4で全勝チームと対戦することになるが、ヘンスリー・ミューレン監督は「チャレンジの用意はできている」と語気を強める。

ポイントは投手と守備

プエルトリコの先発予定は右腕のロペス 【写真は共同】

 ここまでプエルトリコがチーム打率3割3分(1位)、得点51点(1位)。オランダが打率3割2分4厘(2位)、得点45得点(3位)と攻撃面での爆発力に目が行く。しかし防御率を見るとプエルトリコが2.25(1位)、オランダが2.94(6位)、そして守備失策がプエルトリコが「1」でオランダが「2」と、ディフェンス面でも非常に手堅い。ロドリゲス監督もミューレン監督も、自軍の躍進の理由を投手陣の踏ん張りと守備陣の堅守によるところも大きいと強調する。

 19日の練習でも両軍は外野フェンスへのボールの跳ね返りや天然芝の状態をノックで入念に確認し、守備面での不安をつぶすことに注力した。

 オランダの主砲でここまで大会トップタイの3本塁打を記録し攻撃陣をけん引するウラディミール・バレンティンは、プエルトリコを撃破するためには「ここまでと同じようにピッチングとディフェンス面で最上の仕事をする必要がある」と、いかにミスをせずに失点を最小限に抑えることが肝であると説いた。

ハイレベルな戦いに期待

 チームの一体感もまた両軍に共通する強さの秘密だ。オランダの場合は本国出身者とキュラソー島などからの出身者で構成され、文化や言葉が異なる一方で、キュラソー島などの出身選手は幼い頃からともにプレーする機会も多く、異なるメジャー球団でプレーする現在でもオフになればともに練習を行い、気心の知れた仲間たちでチームを組んでいる。

 ディディ・グレゴリアスは「自分と(アンドレルトン・)シモンズらとは6歳から一緒にプレーしてるし、2歳年下のボギー(ザンダー・ボガーツ)とは彼が14歳からプレーしている。一緒に成長してきたようなもの」とチームの連帯感についてそう述べた。東京ドームでの2次ラウンドでも、オランダは誰かが本塁打を放つとまるでそれがサヨナラ弾かのようにベンチの全員がフィールドに出てきて祝福するシーンが印象的だった。

 プエルトリコも地元のためにプレーすることの意味を選手の多くが共有しているというが、それに関しては06年、09年大会では選手として出場し、現在は同軍のGMを務めるアレックス・コーラ氏が面白いエピソードを教えてくれた。

 今年2月、カリビアンシリーズでプエルトリコ代表のクリオロス・デ・カグアスが優勝を飾った。同シリーズはラテンアメリカのクラブチームの頂点を決める大会ではあるもののの、コーラによれば現代表選手たちはインターネットのグループチャットを作り決勝戦後は優勝を大いに祝ったという。

「あの優勝が今回のわれわれの快進撃の始まりだったと言えるし、ここ数カ月は地元ではかなり野球熱が高まった。このまま突っ走りたいね」(コーラ)

 両軍ともこの4年で大きく成長し、より一体感を増した。20日の準決勝では誇りを胸にハイレベルな戦いを見せてくれそうだ。
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著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

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