バレンティンが見せる勝利への執念 オランダの中心としてチームをけん引

菊田康彦
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東京での2次ラウンドでは3ホームラン10打点の活躍でE組のMVPに輝いたバレンティン 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 13打数8安打(打率6割1分5厘)、3本塁打、10打点──。

 東京ドームを舞台に行われた第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)2次ラウンド、グループE。そのMVPに選ばれたのは、すさまじい打棒でオランダ代表を決勝ラウンドに導いたウラディミール・バレンティン(東京ヤクルト)だった。

「どの打席も、これが最後というつもりで集中していた」

 自ら2本のホームランを含む3安打、5打点の大暴れで、キューバにコールド勝ちした15日の試合後、バレンティンは会見でそう話している。

 集中している時のバレンティンは恐ろしい──。

 それは誰もが認めるところだろう。とにかくこのWBCでは、彼のプレーからは並々ならぬ集中力が感じられる。そしてベンチ内では仲間を鼓舞し、出塁すれば全力で次の塁を狙う姿勢でチームをけん引している。

 その反面、プロ野球のシーズンではしばしば集中力を欠く場面も見られるなど、“気分屋”の一面もあるのがバレンティンだ。ピッチャーゴロに倒れるや、一塁に走ることなく打席の中でレガースを外し始め、首脳陣の怒りを買ったこともあった。

シーズン中も「勝つためにやっている」

 だが、実は勝ちに対するこだわりは人一倍強い。それはひとえに「優勝」に飢えているからだ。いわく、来日前は「ベネズエラのサマーリーグと、(オフシーズンの)ウインターリーグで優勝したことはあるけど、マイナーでもフルシーズンで優勝した経験はなかった」のだという。だから、自分がホームランを打っても、チームが敗れれば口は重くなるし、負けが込んでくるとモチベーションがガクンと下がるのがわかる。

「勝ちたいんだよ。過去2年は優勝争いに加わりながら、勝てなかった。今年は今のところ勝率5割にも届いていないから、その点ではフラストレーションを感じているけど、それは表に出さないようにして、毎試合一生懸命プレーするよう心掛けている。ただ金を稼ぎに来てるわけじゃない。勝つためにやってるんだ」

 そう力説したのは、ホームランの日本記録更新に向けてひた走っていた13年シーズン半ばのことだ。
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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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