なでしこがアルガルベで築いた新たな土台 得点王・横山、初代表の長谷川が存在感
多くの選手が実戦経験を積む貴重な場に
既存の選手たちと新しい選手たちの融合が見られたのは、今大会の収穫のひとつ 【松原渓】
今大会は交代が6人まで許されており、多くの選手が実戦の経験を積むことができる貴重な場でもあった。高倉監督は試合ごとにメンバーの組み合わせやポジションを入れ替えながら、3人のGKも含めたメンバー全員を起用(けが人を除く)。特定のポジションにこだわらず、1人の選手を複数のポジションで試すなど、新たな可能性も探った。
MF長谷川、FW籾木、DF中村楓、北川ひかるの4人が初めて代表のピッチに立ったが、それぞれがのびのびと自分の良さを出そうとトライする姿勢を見せた。これまで代表を支えてきた阪口夢穂や熊谷紗希ら、経験豊富な選手たちがプレーで見本を示し、経験の浅い選手たちをサポートした。約2週間の海外遠征の中で、既存の選手たちと新しい選手たちの融合が見られたのも収穫といえる。
守備面においては、いくつかの課題が見えた。今大会の4試合で喫した5失点はほとんどが自分たちのミスから招いたものだった。国際試合の舞台においては、1つの判断ミスや、集中力の欠如が致命的な結果を招くことになる。
高倉監督は「まだまだ勝負に対しての勝ち方、勝負どころに対する危機感が足りないと感じます」と、若いチームが露呈した課題を指摘したうえで、今後は「悔しい思いを持ち帰って(各チームで)継続できるかが大切」と選手たちの今後に期待を込めた。
可能性を感じさせた2人のプレーヤー
A代表デビュー戦で2ゴールを挙げた長谷川唯(17番)。今後のさらなる活躍が期待される 【写真:アフロ】
4試合で4ゴールを挙げ、大会得点王にも輝いたFW横山久美は、なでしこジャパンの「新エース」にふさわしい活躍を見せた。その魅力は何と言っても洗練された得点感覚だろう。あらゆる角度から、どんな体勢からでもシュートを放ち、ゴールネットを揺らすことができる。大会中、横山は誰よりも早くグラウンドに出てトレーニングを開始し、練習後は自ら志願して黙々とシュート練習をこなしていた。「普段の生活がプレーに出る」(横山)と、日頃から最善の準備をして試合に臨み、得点以外の部分でも、献身的なプレーでチームに良い流れをもたらした。
MF長谷川はU−20日本女子代表の中心選手としても活躍を見せていた。A代表デビューを飾ったアイスランド戦では、2ゴールを記録し大きなインパクトを残した。ボールタッチが柔らかく、アジリティー(俊敏性や機敏性)能力も高い長谷川は、豊富なスタミナを持つ、戦術眼の高い選手だ。今大会では中盤のゲームメークやアシスト能力に加え、得点能力の高さも発揮。10代前半から年代別代表で頭角を現し、日本が優勝した14年のU−17女子W杯ではシルバーボール(準MVPに当たる賞)を受賞している。10代前半から一貫して高倉監督の指導を受けてきたこともあり、今後のさらなる活躍に期待がかかる。
群雄割拠の女子サッカー界
日本が初戦で敗れたスペインは初出場ながら優勝を果たした。女子サッカー界は群雄割拠となりつつある 【Getty Images】
女子サッカー界は群雄割拠となりつつあるが、日本が19年のW杯で再び世界の頂点に立つために、どのようなチームを作っていくのか。今後の高倉監督の手腕に期待したいところだ。
4月9日には高倉監督就任後、初の国内試合であるキリンチャレンジカップが行われる。今大会で得た収穫を土台にして、引き続き課題に取り組みながら、チームの骨格を形成しつつあるなでしこジャパンの今後の成長から目が離せない。