U-20代表の合宿で感じた「価値ある競争」 森島、久保ら常連選手以外が猛アピール

川端暁彦

後半は久保、原らが個性をアピール

内山監督は久保について「将来性もあるけれど、何より戦力になると思っている」と語った 【川端暁彦】

 11人全員をハーフタイムで交代した後半は開始早々の8分にゴールが生まれる。攻守の切り替えからMF原輝綺(アルビレックス新潟)が果敢に持ち上がり、そのパスをFW小川航基(磐田)が受けて流し、最後は中学3年生のFW久保建英(FC東京)が鮮やかに流し込むファインゴール。久保について内山監督は「将来性もあるけれど、何より戦力になると思っている」と語っていたが、ワンプレーでそれを実証するような決定力を見せ付けた。シューティング技術の高さはトレーニングから際立つが、実戦のプレッシャーの中でも変わらず発揮できるメンタリティーも久保の持つ貴重な個性である。5学年上の選手がいる中にあっても、その個性は確かな武器となっている。

 ゴールの起点になった原も確かな存在感があった。市立船橋高校から今季新潟へ加入し、いきなりスタメンを確保しているだけに、確たる自信を感じさせるプレーぶり。昨年は中盤の守備固め要員のような使われ方も多かったが、世界大会に向けては先発候補と言っていいだろう。確かな戦術能力に加えて、走る・跳ぶ・当たるといった身体能力の絶対値も高く、よりパワフルな選手を迎え撃つ必要のあるU−20ワールドカップ(W杯)では自然と需要の高まる個性と言えそうだ。

10年ぶりに得たU−20W杯出場権の意味

 それぞれの個性も見えた1泊2日のミニ合宿を経たチームはいったん解散。3月19日に再集合してドイツ遠征を行い、現地で道場破りのようなツアーを敢行する。ベストメンバーがそろうこの遠征では同世代のドイツ代表の胸も借りる予定で、世界大会に向けて貴重なシミュレーションの場となりそうだ。4月にもショートキャンプが予定されているが、こちらは所属チームで試合に出ていない選手たちの試合勘を養い、状態を確認することが主目的。このため、チーム作りという意味では月末の遠征が実質的には最後の機会とも言えそうで、重い意味を持ってくる。

 昨年のチームではもっぱら控えDFだった町田浩樹(鹿島アントラーズ)が体重を増やして見るからに体の厚みを増して合流してくるなど、常連組もまた世界大会を意識しながら変化を遂げている途上にある。“U−20W杯”という目に見える大きな目標がある中で、若いタレントたちが切磋琢磨(せっさたくま)しながら成長している様子を見ると、あらためて10年ぶりに得た出場権の大きさも実感させられる。この合宿から再スタートした競争は、彼らの力をまた一段上に押し上げてくれることになるだろう。

 そして、この価値ある競争は直近の世界大会のみならず、2020年の東京五輪、そしてA代表の舞台へとつながっていくに違いない。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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