プロスケーターが語るアマとの違い 厳しい環境の中でも感じる「やりがい」
プリンスアイスワールドチームに所属する小林宏一(右)と松村成に、プロとアマチュアの違い、やりがいや未来について語ってもらった 【スポーツナビ】
そのチームの一員として活動するのが、小林宏一と松村成だ。小林は過去に全日本選手権で7位、NHK杯にも出場した実績を持つ。またジャニーズ事務所に所属し、芸能活動をしていた時期もあるなどその経歴は異色と言える。アイスショーで披露するバックフリップ(後方宙返り)はもはや定番として、ファンに認知されている。松村も全日本選手権の出場経験があり、昨年チームに加わった。父の松村充さんは76年のインスブルック大会、80年のレークプラシッド大会と2度の五輪に出場。その後、プロとしてプリンスアイスワールドチームに所属しており、松村自身も父の影響を多分に受けているようだ。
日本はアイスショーよりも、競技会の注目度が高い。そうした傾向を2人は残念に思っている。しかし、フィギュアスケート人気の高まりもあり、最近では徐々に手応えも感じつつあるという。「スケートのショーを広めていきたい」。2人の思いは共通していた。
選手時代とは別のプレッシャーがある
プリンスアイスワールドは40年近く続いているが、日本ではショーよりも競技会が注目される傾向にある 【坂本清】
松村 僕の父が20年近くこのチームで活動していて、小さいころからずっと見ていたんです。父の影響からフィギュアスケートを始めて、いつしかアイスショーに出たいという気持ちが芽生えていました。競技者としては結果を出せず、見せたいスケートもなかなか表現できなかった。お客様に魅せたいという一心でチームに入りました。
小林 僕は24歳まで現役を続けて、25歳の年にプリンスアイスワールドチームに入ったんですけど、その前にも人前に出る仕事をやっていて、本当はそちらと両立してやっていきたかったんですね。でもどちらかを選ばざるを得なくて、ショーの世界に行きました。ディズニー・オン・アイスやホリデー・オン・アイスなどいろいろショーはあったのですが、海外のショーに全く興味がなくて(笑)。僕は品川プリンスホテルのスケート場でスケートを始めたころからずっとプリンスアイスワールドを見ていました。チームに入る前にもゲストとして出演したことがあって、入るならプリンスアイスワールドだなと思っていましたね。今はレベルも上がってきて、公演数もここ3年ですごく増えてきました。もっといろいろな場所でやっていき、最終的にはスケートのショーというものを定着させたい。日本でも40年くらいやっているショーなので、世界でもできるようになったらいいなと思って頑張っています。
――海外のショーとは違ってまだ注目度に差があるのでしょうか?
小林 海外にはいろいろなショーがあるんですけど、日本ではプロよりもアマチュアが注目されていて、それが残念だなと。ショーの良さをもっと伝えて、「スケートのショーはこんなに面白いんだ」というのを広めていきたいです。スケート自体がすごく注目されていますし、今がチャンスなんですよね。現役選手だけではなく、プロのショーにもファンの方々が目を向けてくれたらな、という思いでやっています。
小林は「選手とは別のプレッシャーを感じる」と、プロの厳しさを語る 【スポーツナビ】
小林 引退してみて、やっぱり現役は楽しかったなと思いますね。やっているときは、分からないことがいっぱいあったり、辛いなと感じていたんですけど……。プロに転向してからは、選手以上に失敗できない。言ってしまえば、選手は失敗しても自分の責任みたいな感じでした。ただプロになったら、みんなお金を払って見に来てくれるので、楽しませなければいけないし、夢を与えなければいけない。選手とは別のプレッシャーですよね。お客さんの反応で僕たちの評価が全部決まってしまうので、そこが現役との違いです。
松村 責任がすごくある仕事なので、自分1人の問題ではないんですね。選手のときも、サポートをしてくださる方や、応援してくださる方の期待に応えなければいけなかったのはあるんですけど、プロになると自己満足では終われないというのがあります。お客様にどう思っていただけるか。そこを肝に銘じてやらなければいけないので、本当に厳しい世界です。僕は1年目なのでまだ分からないことがいっぱいありますけど、そういうことを実感した1年でした。