鈴木大輔、スペイン2部で身に付けた逞しさ サッカーができる幸せと、あくなき向上心

中田徹

今季の目標は2部残留

昨季はプレーオフにまで進んだヒムナスティック・タラゴナだが、今季は残留が目標となる(写真は国王杯) 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

――ロッカールームにはスムーズに入っていけましたか?

 入っていけましたね。何を言っているか分からないから、「じゃあ、テンションだけで乗り切ってやろう」と思って、もう「ウェーイ!」って。どうせ分からないし、ちょっと開き直っていました。

――昨季のタラゴナは終盤の快進撃で、昇格プレーオフまでたどり着きましたが、そこでオサスナに敗れました。

 プレーオフへ近づくにつれて、観客・サポーターが(スタジアムに)満員近く入っていきました。こっちのサポーターはやはり迫力がありますし、アウェーのオサスナでやった時もサポーターが熱くて楽しいなと思いました。「ヒリヒリしてるわ」って。ワンプレー、ワンプレーが緊張するような感じでしたね。

――現時点(第26節終了時点)、ナスティックは降格圏(21位)です。昨季との違いは何でしょうか?

 あまりないと思っているんですけれど。劇的に変わってはいなくて。ただいまひとつ、勝負強さが……。

――2点差以上の負けがたった3試合。0−0、1−1、1−0、0−1という僅差の試合が多く、とても前節まで最下位のチームとは思えない接戦ばかりなんです。

 そうですね。本当に紙一重です。

――3日前の試合、対ヌマンシア戦(2−0で勝利)を見ましたが、勝負強いチームに見えました。

 それが昨シーズン。勢いがありましたよね。

――それは勝手に生まれる勢いなんですか?

 セグンダB(3部)から上がってきたチームだったので、昨シーズンは失うものがないという勢いでやっていました。今季は、ちょっと気負ってしまったのかもしれません。

――チームはセグンダBから上がり、鈴木選手はテスト生から上がり、お互いがリンクしたんですかね?

 そうですね。リンクしていた部分があると思います。半年前は自分も勢いでできた部分もありました。チームも自分も、失うものがありませんでした。

――今の目標は残留でしょうか?

 そうだと思いますね。でも3連勝とかしたら、一気にプレーオフ争いまでいくんですよ。行くんですけれども、そこにあまり望みを自分は持っていません。

――どうしてですか?

 1年間やって思いましたけれど、2部のチームは実力差がありませんから団子状態。連勝したら順位が一気に上がるけれど、勝ったり負けたり引き分けたりで、一向に差は縮まらない。どのチームも実力が一緒だと思うと、客観的に見て、あまり期待しすぎない方がいいかなと思います。

――残留を決めたら、今季はそれがチームにとってタイトルですか?

 だと思いますね。自分は目の前の試合だけを考えてやっていますけれどね。

――先ほど「毎日成長している」という話がありました。もし、柏のサポーターや新潟のサポーターが今の鈴木選手をみたら「お、違うな」と思うのでしょうか?

 あまり思わないと思いますよ。(変わったものは)もっと内にあるもので、特にうまくなっているわけでもないですし。サッカーにはいろいろなやり方がある中、自分がスペインのやり方にうまく適応できたという実感はあります。ただ、何かの技術が上がったかというと、それは微々たるものではないでしょうか。

 こっちの選手と対峙(たいじ)するようになって、ボールを奪うバリエーションが増えたとか、アグレッシブさが増したとか、そういうのはありますが、それもそれほど劇的に上がったというわけではない。スペインで戦い続けたことによるメンタル的なところだと思います。

高まる鈴木のチームでの存在感

1部チームからオファーが来れば、「練習生として2部リーグのチームに来たこともすごく価値が出る」と鈴木は語る 【中田徹】

――今季はヨーロッパで活躍する日本人DFの記事をよく読む気がします。

 自分は全然ですね。最近、スペイン2部リーグのことが注目されているじゃないですか。それでも、俺の名前は出てこない。でも、それでいいと思っています。後に自分が次のステップを踏んだ時に、「実はスペイン2部リーグでこんなに試合を重ねていたんだぞ」「あ、マジか!?」とサプライズを起こせれば、それは面白い。ダークホースのように上がっていく。今は2部リーグですから映像で見てもらえないけれど、「あらら、あらら」という感じで上がっていきたいです。

――ストライカーは点を取れば注目される。DFのクリーンシートだって、ゴールと同じ価値があるんですけれどね。

 でも、クリーンシートは1人の力ではないですからね。もっと注目されればいいと思いますけれど、そこに固執はしてないですよ。ここから1部リーグでプレーするようになれば、こっちで地味に評価を上げていたことが分かるので、そうなればいいかなと思います。

――テスト生でスペイン2部リーグに飛び込んだ日本人CBが、1部リーグでプレーするようになったら偉業だと思います。

 ねえ!

――昨季、プレーオフまで進んだ時は、私も夢を見ました。

 でも、スペインの違うチームからオファーがあって、それが仮に1部のチームだったら、その方がすごくないですか? チームと一緒に昇格するのもすごいけれど、個人として評価されるのは、どちらかといえばオファー。その方が、インパクトがある。自分の中では、面白くなるのはそこからじゃないかなと思っています。

 自分が1部リーグの試合に出場できたら、1年前に練習生として2部リーグのチームに来たこともすごく価値が出る。「こういう道もあるよ」というのを、後に続く者たちに示せます。そういうことにもモチベーションを感じています。

――本田選手はVVVの一員として2部で活躍し、チームとして1部に昇格しました。星稜高校にはチャンレンジする何かがあるんですか?

 俺、あると思いますけどね!

――河崎護先生の影響は?

 人間力とか、河崎先生の影響はあるでしょうね。河崎先生は自分で道を切り拓く。石川県は全国からするとサッカーが全然根付いておらず、自分が小学生のころは、全国選手権で1回戦を勝つと「ワー」という感じでした。そんな石川県で、先生は日本代表ユースとか、クラブチーム、高校サッカーの強豪を招待して夏にフェスティバルを開いた(石川県ユースサッカーフェスティバル)。そんな行動力を自分は見ていました。

 教師としても、今は階段を上がって今は星稜高校の教頭です。本田さんが入ってきてから(04年度大会で)ベスト4にいきました。(12年度大会から)4年連続ベスト4、そのうち1回は優勝しました(14年度)。先生は自分のやりたいことを達成し、その背中を自分たちは見てきましたから、何かしら影響はあったと思います。

――先日の試合、日本人のファンをけっこうスタジアムで見かけました。日本人のファンはよく来るんですか?

 いや、めずらしく来ていたんですよ。うれしいと思いました。ここに来ると目立つので、すぐ分かりますよね。ああいうことはあまりなかったですね。コアなスペインの感じがここで見られますね。バルセロナは観光客目当ての建物が結構あるけれど、こっちはもっと生活感が見られたりする。歴史的なところもあるし、気に入るのではないかと思います。

――今、ご家族は?

 一緒に住んでいます。最初の海外がタラゴナで本当に良かった。とても住みやすいです。

 このインタビューの後、2月26日のサラゴサとのアウェーマッチで、鈴木はヘディングで決勝ゴールを決めて、チームを2−1の勝利に導いた。この勝ち点3でタラゴナは22チーム中18位に上がり、第27節にしてようやく降格圏から脱出。鈴木のチームでの存在感はますます高まっている。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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