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天龍源一郎が語る「LIVE FOR TODAY」
格闘技人生の中で結実した人生訓

“いまを生きる”という言葉が人生訓

いつでも一戦一戦が勝負。最後のオカダ戦でもその生き様を見せた
いつでも一戦一戦が勝負。最後のオカダ戦でもその生き様を見せた【写真:SHUHEI YOKOTA】

――今回の映画化について、そもそもはどういった経緯で決まったのですか?


 僕はもう全然知らなくて、代表をやってる娘と周りで話が進んだのだと思います。ある時から急にカメラが入って回っていて、「何をしに来てるのかな?」って感じだったんですけど、「何なの?」って聞いたらドキュメンタリーを撮ると。まぁそれも記念にいいかなって思ったんですけど、あんまり長い間ずっと来るから、実は映画にするって言われて。最初は監督と距離感もあって、あんまりいつもカメラが控え室に入ってきてウザいなって抵抗があったんですけど、映画になるっていうし、監督が一生懸命撮ってくれているんだから、自分の全部をさらけ出してできる限りのことは協力しようと。それでだんだん距離が近くなっていったのが正直なところです。


――映画を作るにあたって、何か天龍さんからリクエストされたことはありますか?


 いえ、何もないです。日々の着飾っていない、全盛期を過ぎた天龍源一郎を撮ってくれればそれでいいっていう感じです。僕もやるだけやったところがあったと思うんですけど、最後の終焉に向かっていく――人間とはそういうものだろうっていう開き直りじゃないですけど、そういうものを見た人が感じてくれればいいという感じで、ほんとに何も飾るところはなかったですね。本当に川野(浩司)監督には感謝したいです。自分で言うのもおかしいけど、いいドキュメンタリーに仕上がったと思っています。


――天龍さんがプロレス、そして相撲から続いた格闘技人生を締めくくる姿が描かれていましたが、人が長く取り組んできた仕事を終えるにあたり、どのようにあるべきだと天龍さん自身は思われますか?


 僕はどんな仕事でもそうですけど、真っ正面からぶつかって躊躇しないで一歩踏み出して行けば意外と難しいことはなくて、何か顛末を得られるというのが結論です。だからみんな躊躇して、考えて後退するより、一歩踏み出して行った方が新しい自分を発見できるし、生きていく力というのは湧いてきますよね。


――まさにタイトルの「LIVE FOR TODAY(いまを生きる)」にも繋がるお話ですが、これは以前から言われていて、天龍さんの哲学やポリシーと言えるものではないですか?


 相撲の時は一戦一戦が勝負で、それこそ白黒によって次の人生が変わるというような感じですから、いまを一生懸命生きることによって明日は自ずと来るだろうっていう風に考えがだんだん変わっていったというのがあります。みなさんそうだと思うんですけど、余力を残して明日を迎えたいって思いますよね。でも、余力を残している時の自分を見た人は、「あいつは一生懸命やってないじゃないか」って評価になると思うから、だったらその日その日を一生懸命やっていけば、明日は自ずと来るということを理解してほしかったんです。相撲もプロレスもそうですよね。


 それは相撲でたまたま幕内の筆頭まで行った時、次の日に取りやすい相手と当たって、“これで明日勝って次は三役か”ってうぬぼれていた自分がいて、でもそれが裏目になって負けちゃって、その場所は成績が悪くて二度と三役に上がるチャンスはなかったんです。その時に、やっぱり“その時その時を一生懸命生きる”っていうことを感じました。チャンスなんていつでも来る、またこういうチャンスは来るって思うけど、その一瞬一瞬はその時しかない。その取り組みの時はうぬぼれていた自分がいたと思います。


――では「LIVE FOR TODAY」は戦うことを通じて得た、天龍さんの……


 そうですね、僕の人生訓です。でも“いまを生きる”って言うと、何か刹那的に、将来設計もしないで今日だけでっていう風に感じられるんだけど、本当に今日を一生懸命に生きたら、その姿を見て、“ああ、こいつ一生懸命やってるな”って思ってピックアップしてくれる人がいると思います。だからこれは僕の確信的な言葉で、今まで67年生きてきた結論です。

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――引退までの10カ月もそうですが、キャリアを振り返ってみても天龍さんほど多くの選手、トップレスラーと戦った人はいなかったのではと思います。


 これはたぶん性格のなせることだと思うんですけど、同じことをやっていると飽きちゃうんです。同じことをやっていると「こんなはずじゃないだろう」って思って、何か違うことに興味を示しちゃうっていうのがあって。その裏には13から入って26までいた相撲を辞めてプロレスの社会に飛び込んだんだから、どっちみち入ったならすべてのことを体験してやろうっていう気持ちがあったんだと思います。


 極端な言い方をすれば、プロレスへ転向する時、いろいろなバッシングを浴びて入ったから、いろいろなことを体験していろいろなことをみなさんに提供して、「これでどうだ」っていう一種の開き直りです。どのみち天龍源一郎を見てもらうんだったら、「こいつ面白い奴だな」って思われることをやった方がいい、そう考えたんだと思います。僕が入った時はちょうど「プロレスなんて八百長でいい加減なことをやってるんだよ」ってよくそういうバッシングをされた時代ですけど、それにも立ち向かって、「じゃあ見てみろよ、お前らやってみろよ」とかって気持ちと相まって、やれるだけのことやったっていうことじゃないですかね。


――ナレーションを務めた染谷将太さんとは公開初日の舞台あいさつで初めてお会いになったそうですが、何かお話はされましたか?


 あの人が本当に小っちゃい頃からプロレスを見てたなんて聞いてビックリしました。そうやって潜在的にプロレスを好きな人がいるんだから、その人たちにカッコ悪い思いをさせてはいけないっていうのを改めて感じました。レスラーの人たちも、そういう隠れプロレスファンっているんだから、そのファンの人たちが恥ずかしくないって思うようなことを、別にファンの人に「誰々が好き」って声を出して言ってもらわなくてもいいけど、少なくとも応援してくれている人が「俺はこの人を応援している」って思える、胸いっぱいの気持ちでリングに上がってくれと。それをその人に対してでもいいからリングで表現してくれとは思います。


――映画の中でも若手のレスラーにプロレスで飯が食えるようになってほしい、胸を張ってほしいというように言われるところがありました。


 それは思います。みんな自分で目一杯やってると思えば恥ずかしいこともないし、さっきの話じゃないけど、とやかく言われるんだったら「じゃあ、あんたリングに上がってやってみなよ」って言うところまで極めろよって言いたいです。


――手を抜かず目いっぱい、一生懸命やるというのも「LIVE FOR TODAY」と並び天龍さんのモットーと言えそうですね。


 僕はほんと相撲で中途半端な感じで終わっちゃったっていうのもありましたし、それと同時に若貴(若乃花・貴乃花)のお父さん(貴ノ花)が僕と同い年なんです。それが彼が入ってきた時に彼が相撲一途にガーっと打ち込んでいるのを見て、“バカみたいに相撲に打ち込んで”ってちょっと冷めた自分がいたんです。でも結果的に彼は大関まで行って、それを思った時、やっぱり一生懸命に打ち込んでおけばよかったなっていう後悔もありました。だからそれを振り返ってプロレスへ入った時、一生懸命やろうって思う僕もいたんです。なので、みなさんには俺と同じ失敗はするなよって言いたいですね。


――作品をご覧になる方へ最後にメッセージをお願いします。


 川野監督がよいところをピックアップして切り貼りして、染谷さんが上手いことナレーションを入れてくれて、本当によい作品に仕上がったと思います。みなさん、観て頂ければ必ず何かを感じてもらえると思います。僕はもう満足です。冥土の土産にいいものができたと思っています。

しべ超二

映画ライター。ペンネームは『シベリア超特急2』に由来し、生前マイク水野監督に「どんどんやってください」と認可されたため一応公認。松濤館空手8級。

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