翌週に迫るエル・クラシコの勝者は? レアル・マドリーの優位を予想する理由

バルセロナのプレースタイルは健在も……

長年維持してきたプレースタイルは健在のバルセロナだが、その輪郭は曖昧になりつつある 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 今季のバルセロナは読めないチームで、攻撃陣の誰がプレーするかによって試合の出来が大きく変わってくる。特にアンドレス・イニエスタが離脱して以降は、チームの土台となる中盤に問題を抱えてきた。

 それでも3トップを形成する南米トリオ(リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマール)の破壊力によって大抵の問題は解決してきたものの、スアレスの出場停止に加え、メッシも体調不良のため欠場した第12節のマラガ戦(0−0)ではボロが出た。分厚い人壁を築いて引き分け狙いに徹してきた相手に対し、控え選手を多数起用したルイス・エンリケは、こうした状況を打開するためのアイデアやメカニズムの欠如を露呈することになった。

 もう長いこと前線のスター選手たちに多くを依存してきたバルセロナは、彼らのいずれかが欠けるだけで勝利への道筋を見失うようになっている。もちろん長年維持してきたプレースタイルは健在ながら、その輪郭は着実に曖昧になりつつある。

 バルセロナは次節、近年何度も痛い目に遭ってきたアノエタ(レアル・ソシエダのホームスタジアム)を訪れなければならない。しかも好調のレアル・ソシエダは勝てばカタルーニャのビッグクラブに勝ち点1差まで近づくことになる。これはリーガの序盤戦における予想外の事態である。

 23日に行われたCLでセルティックとのアウェー戦を2−0で制し、グループ首位通過を決められたことは朗報だ。この試合でつまずけばグループリーグ突破に黄信号がともり、最終節に勝負を持ち越す可能性もあったが、何とか踏みとどまったことで、年内はリーガに集中できる環境が整った。

クラシコの結果次第では、リーガも再び混戦に

3位のセビージャは今季のリーガに新たな興奮をもたらしている。果たして冬の王者はどのチームか? 【Getty Images】

 現在リーガで3位につけるセビージャは、過去数年タイトル争いに加わるようになったアトレティコ・マドリーと同じく、かつては2強、近年は3強による首位攻防に慣れすぎてしまったリーガに新たな興奮をもたらしている。

 セビージャは第12節、ガブリエル・メルカドが土壇場で奪った決勝点により、デポルティーボとのアウェー戦を3−2で制し、レアル・マドリーとの勝ち点6差を維持した。ミッドウイークのCLではホームでユベントスに1−3で敗れたものの、次節の相手は低迷するバレンシアだ。

 エル・マドリガルにアラベスを迎える4位のビジャレアルも次節は比較的楽なカードとなる。しかし、ビジャレアルは24日のELでグループステージ突破を懸けたチューリヒとのアウェー戦に臨み、1−1で引き分けている。最終節を前に混戦状態となっているグループステージを戦った影響は懸念されるだろう。

 ダービーの敗戦によりレアル・マドリーと勝ち点9差の6位まで転落したアトレティコ・マドリーは、首位争いから脱落しないためにも次節が正念場となる。それだけに、CLのPSV戦を2−0で制し、グループ首位突破を決められて一安心していることだろう。

 前節ホームで1−0とビジャレアルを下した前節7位のアスレティック・ビルバオは(25日の試合でエイバルがベティスに3−1で勝利したため、暫定8位)、ELでサッスオーロと対戦し、3−2で勝利を収め、グループステージ突破を決めている。週末にはリーガの上位争いに踏みとどまるべく、ラスパルマスとのアウェー戦に挑む。

 ここにきてレアル・マドリーが首位争いから一歩抜け出したが、それもクラシコの結果次第では再び混戦となる可能性が高い。年内のリーガもあと4試合。果たして、どのチームが冬の王者となるのだろうか。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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