日本がサウジを圧倒した3つの要因 はまったハリルホジッチのゲームプラン

清水英斗

シュート数で差がついた要因は組織的な守備の差

サウジアラビアのシュート数5本に対し、日本は16本。これだけの差がついた要因は組織的な守備にある 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 後半は少し、皮肉な展開になったと言えるだろう。

 前半45分に清武のPKにより1−0と先制した日本が、ハイプレス戦術をやめ、逆に前半のサウジアラビアのように、4−4−2のゾーンディフェンスで待ち構える形を取ったからだ。

 選手間のコンパクトさは比べようもない。各ラインが連動し、ボールをしっかりと外へ追い出す。サイドのスペースを突かれる場面はいくつかあったが、大外からのクロスは、吉田麻也を中心にしっかりと跳ね返した。守備については、サウジアラビアにお手本を示す形になっている。

 試合のスタッツもそれを裏付けた。サウジアラビアは前半2本、後半3本のシュートを打ったが、後半は45分を迎えるまでシュート0。後半の展開としては、サウジアラビアが日本を押し込んでいるように見えたが、実はチャンスは少なかった。一方の日本は、前半8本、後半8本で、16本のシュートを打っている。これだけの差がついた要因は、日本とサウジアラビアの組織的な守備の差だ。

 前半に勝負をかけ、先制して逃げ切る。ハリルホジッチのゲームプランは、うまくはまった。

最終予選は対戦相手がかなり周到に準備をしている

前半に勝負をかけ、先制して逃げ切るというハリルホジッチのゲームプランはうまくはまったと言える 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 個人的な印象では、思っていたよりもサウジアラビアのフィジカルコンディションは良かった。寒い季節の日本にやって来て、この内弁慶な中東の王国が、高いパフォーマンスを発揮することは想像していなかったが、少なくとも過去のイメージより強かった。

 今回、サウジアラビアは試合の1週間前、11月8日に来日している。11日に日本と試合を行ったオマーンと同じタイミングだ。

 入念な準備は、ディテールにも見られた。酒井宏樹は「すごく日本を研究しているなと思いました。(セットプレーで)僕がブロックして麻也君(吉田)を生かすのもバレていたし。勝負はそういうところで決まりますから」と試合後に語っている。

 本当に、この最終予選は対戦相手がかなり周到に準備をしていることを、毎試合痛感する。難しい試合ばかりだ。

 しかし、どんなに準備をしても、選手個人の守備戦術の差は、短期間では埋めようもない。長い時間をかけ、成長し、理解していくものだ。技術を戦術で埋めることができないように、個人戦術をチーム戦略で埋めるのも、やはり限界があったのではないか。サウジアラビアを見ていると、そんなことを感じる。

 もっとも、日本もサウジアラビアと比べると戦術が優れているように見えるが、世界との比較ではそうも言えない。決しておごることなく、今回のサウジアラビアを他山の石とし、より一層パフォーマンスを上げる必要がある。

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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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