国民のシンパシーを失っているオランダ “ボーナス”ロッベンは前半活躍も……

中田徹

ヒーローになった途中出場のデパイ

スナイデルに代わって後半からプレーしたデパイは2ゴールの活躍 【写真:ロイター/アフロ】

 ロッベンとスナイデルに代わって両ウイングを務めたのは、ベルフハウスとデパイだった。とりわけデパイが入った左サイドは活性化した。前半のオランダはスナイデルが縦に深くプレーすることがなかったが、後半はメンフィスが相手陣内深いところまでボールを運んだので、左サイドバックのブリントが良いタイミングでボールをもらい、好クロスを供給することができた。

 スナイデルOUTデパイINの采配は当たった。58分、オランダがデパイのヘディングシュートで2−1と勝ち越したが、このクロスを上げたのもブリントだった。さらにメンフィスは84分、チームを3−1に導くFKを直接決め、この日2ゴール。オランダの危機を救うヒーローになった。

 テレビ中継で、NOSのアナウンサーが叫んでいたのは「ラムセラールがこの日のオランイェのベストプレーヤーです」という言葉だった。ラムセラールはシーズン開幕直後、ユトレヒトからPSVに引き抜かれた20歳のタレントだ。ベルギー戦で代表デビュー、ルクセンブルク戦で初先発だったが、堂々たるプレーを披露していた。

 だが、私がこの夜のベストプレーヤーを1人選ぶとすれば、ファン・ダイクの名前を挙げたい。ルクセンブルクのクロスを弾き返し、ロングボールを冷静に処理してマイボールにし、スライディングタックルは正確だった。メンフィスの2点目のゴールも、ファン・ダイクが中盤に攻め上がって奪ったFKから生まれたものだった。

悪いときにもしっかりオランダ代表のサッカーを見たい

ルクセンブルク戦の後半が、オランダ復活のターニングポイントになったと言える日は来るか 【写真:ロイター/アフロ】

 ルクセンブルク戦は娯楽的要素に乏しく、オランダ人はザッピングしながらF1ブラジルグランプリのマックス・フェルスタッペンの快走に心を奪われていた。かつての名選手ビレム・ファン・ハネヘムは新聞の定期コラムで「オランイェを見るより、マックスを見ている方が100倍楽しかったんじゃないか。多くのオランダ人がテレビのリモコンを使ってザッピングしてたと思う。レフェリーがさっさと笛を吹いてサッカーの試合が終わり、私は喜んでF1にチャンネルを合わせた」と記している。

 オランダ代表が国民からのシンパシーを失っているのは、4日前のベルギー戦の客の少なさからもうかがい知れる。

 それでも私はこの国に住んでいる以上、良いときばかりでなく、悪いときにもしっかりオランダ代表のサッカーを見たいのだ。将来、オランダ代表が世界のトップクラスに返り咲く保証はないけれど、それが実現した暁には「1人当たりの平均キャップ数わずか21回で戦ったルクセンブルク戦の後半が、オランダ復活のターニングポイントになったんだ」と言える可能性もゼロではないのだ。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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