ハーフナーが過ごした“暗黒の10月” 不振を脱し、チームとともに再浮上なるか

中田徹

ハーフナーも不振から抜け出せず

ハーフナー自身も得点を奪えず、波に乗り切れない日々が続いた 【Getty Images】

 ハーフナー自身も批判とは無縁ではなかった。

 何しろ、ゴールの数が“3”から2カ月余り、ずっと足踏みしていたのだ。クラブOBでもあるアー・デ・モスは手厳しく語っていた。

「ストライカーは思うようにプレーできない試合があるポジションだ。その中でも、やれることがあるはず。ハーフナーはそこが物足りない」

 10月25日のKNVBカップ2回戦、2部リーグのテルスター相手に、ハーフナーは久々に得点を挙げ、2−1の勝利に貢献した。シュートをブロックしにきた足に怯むことなく、「相手も怖がるだろう、と思い切り蹴った」(試合後のハーフナー)という魂の込もった一発を放った。

「これが1歩。これからトントンと良い状態を取り戻せると思います」と不振からの脱出に期待を持たせたが、どうしてもリーグ戦ではチームも自身も結果が出なかった。

批判を払しょくする働きを見せる

チームはヴィレム戦での勝利をきっかけに再浮上することができるか 【Getty Images】

 こうして迎えた第12節のヴィレム戦。迷えるチームを象徴するかのように、試合当日になって3トップから、ハーフナーとデニス・ファン・デル・ハイデンというツインタワーによる2トップへとフォーメーションを変更した。この采配には「ぶっつけ本番だった」とハーフナーも驚いていた。

 ハーフナーは4分にビッグチャンスを迎えるも、シュートはバーをかすめた。その後は試合を進めながら連係を高めていく手探りの状態に。相手も不調だったため、ADOデンハーグもピンチを招くことなく試合を進めたのは幸いだった。

 やがてハーフナーとファン・デル・ハイデンのコンビネーションが高まっていく。左からハーフナーへ、右からファン・デル・ハイデンへ。クロスがツインタワーめがけて放り込まれ、頭で足で、必死に2人はクロスに合わせていく。こうしたジャブが実り、56分、ADOデンハーグはチームのムードメーカー、センターバックのトム・ブーヘルスダイクがCKからゴールを決めて先制した。

 やっとADOデンハーグがサッカーをする時間が生まれた。ハーフナーも前線で起点となってファン・デル・ハイデンを動かし、その間に自身はペナルティーエリアに走り込んでクロスへ飛び込んでいく。83分にはGKからのロングパスをハーフナーがヘッドでそらし、ファン・デル・ハイデンがシュートに持ち込むというADOデンハーグのストロングポイントが生きた攻撃をみせる。

 攻撃に絡まない時間帯でも、ハーフナーはルーズボールのバトルに積極的に絡んでいったり、中盤でのつなぎに加わったりと、労を惜しまなかった。自身のゴールはなくとも、批判を払しょくさせるだけの働きを十分に見せた。試合後、精根尽きたかのように座り込んでしまったのも、納得できる一戦だった。
 
“暗黒の10月”をハーフナーはこう振り返る。

「良いことがない月でしたね。勝てないし、点も取れないし。点を取りたいです。今日は勝てて本当によかったです」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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