大谷はMLB含めても球速歴代トップ10 ダルビッシュも目指す100マイルの向こう

丹羽政善

ダルビッシュは「上の領域へ」

ダルビッシュはトミー・ジョン手術から復帰後2試合目で99マイルを超える球速を記録した 【Getty Images】

 その大谷を追うレンジャーズのダルビッシュ有。大谷と自主トレをした時、「おまえ(の球速)を超えるから、超えられないように頑張れ」と伝えたそう。6月3日(現地時間)、復帰2戦目のマリナーズ戦で、ロビンソン・カノに投じた4シームが、「statcast」で99.2マイル(159.6キロ)、「PITCHf/x」で99.8マイル(160.6キロ)をマーク。それが今季最速だったが、その翌日、球速の話になったときに明かした。

 おそらくダルビッシュが大谷超えを狙うとしたら来季か。トミー・ジョン手術から復帰して1年目で99マイルを超え、シーズン最終戦となったトロントで、「シーズンの最後の登板はすごく良かったですし、来年はもっと強くなるとは思う」と手応えを口にし、続けている。

「ちょっと無茶しようかな、トレーニングが始まったら。また上の領域に行かなきゃいけないので、そのためには無茶しないといけないと思う」

 あと3マイルほどの差をどう埋めていくのか、100マイルを超えた先には何があるのか――。

最高球速投手は特別な存在

 もちろん球が速ければ打者を抑えられる、というわけではない。速ければ速いほど、投手にとってはアドバンテージとなることは確かだが、初速と終速の差、回転数、リリースまでいかにボールを隠すかなどによって、打者の体感速度は変化し、さらにはボールの動きも打ち取れるかどうかに関わってくる。マット・ケンプ(ブレーブス)も、「98マイルと100マイルは明らかに違うが、100マイルでも動かなければ96〜7マイルの動く球を捉える方が難しい」とドジャース時代に話していた。

 球速の意味をダルビッシュに聞いたときも、「(100マイルが出たら)箔(はく)が付く」と苦笑。球速がすべてではないと言いたげだった。
 
 ただ、どれだけ速い球を投げられるかは、かつて、フェラーの球速をバイクと競争させるようにして測るなど、遠い昔からファンの好奇心をかき立ててやまず、いつの時代も最高速の球を投げる投手は特別な存在として位置づけられてきた。球速は、単に抑えられる、抑えられない、という括りで割り切れるものではない。人間の限界を垣間見るとき、人の心が動く。

 ところで何年か前、元審判に「主審をしていて最も速いと感じた投手は誰だったか」と、聞いたことがある。1980〜90年代に審判を務め、現在はMLBで審判のスーパーバイザーを務めるクリス・ジョーンズ氏は、「ノーラン・ライアン」だと即答した。
「彼の球は別格だった。恐怖すら感じたことがある」

 そのライアンのバス事件の続きである。

 椅子が壊れたことで、チームとバス会社とで補償交渉が行われた。エンゼルスとしては争うつもりはない。修理代も払うつもりだった。しかしベイラーによると、バス会社の方が、原因に関して納得しなかったそう。

「人間の力では、無理です」

 眉間にしわを寄せ、戸惑うバス会社の担当者の表情がなんとなく目に浮かぶ。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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