得点力不足が続くロペテギのスペイン代表 有効な打開策はウイングを活用すること

10月の2連戦もなかなか得点が生まれず

イタリア戦ではビトーロ(左)のゴールで先制するも1−1の引き分けに終わった 【写真:ロイター/アフロ】

 だがロペテギはブスケッツに加えて3人のクリエーティブなMF(基本的にアンドレス・イニエスタとダビド・シルバは固定で、さらにチアゴ・アルカンタラ、コケ、イスコらが加わる)を並べ、前線にはビトーロとジエゴ・コスタしか起用しなかった。

 共にアウェーで行われたイタリア、アルバニアとの2試合は、いずれも似たような内容のゲームだった。スペインがボールを独占しながらゲームを圧倒的に支配するも、相手側のミスを生かして先制していなければ、恐らく90分間スコアが動いていなかった可能性がある。

 わずか3カ月前には異なる戦い方で完勝しているイタリア(ユーロ2016で2−0)だが、意外にも今回は失点回避を優先した臆病で守備的な姿勢で臨んできた。そんな中、ラ・ロハはベテランGKのジャンルイジ・ブッフォンが犯した致命的なミスによって先制点を得た。それにもかかわらず、相手にスペースを与えるリスクを承知で前に出てきたイタリアの猛攻を凌ぎ切れず、内容的に圧倒していた試合でホームチームに勝ち点1を与えることになった。

 アルバニア戦ではイタリア戦以上に一方的なワンサイドゲームを実現しながら、やはり相手GKのキックミスを生かしてジエゴ・コスタが先制点を決めるまで均衡を破ることができず、その後も内容の差をスコアに反映することはできなかった。

ドイツよりも大きく劣っている

スペインの問題は選手の質ではなくプレーコンセプトにある。ロペテギ(右)は修正することができるか 【写真:ロイター/アフロ】

 こうしたスペインの問題点を理解するためには、ドイツの試合を見るのが分かりやすい。現状スペインはチーム戦術でもプレーのリズムでも、ドイツに大きく劣っている。そしてその原因は選手の質にあるわけではなく、チーム全体のプレーコンセプトにある。

 ヨアヒム・レーブ率いるドイツはスペインと同じかそれ以上のポゼッションを保ちながら、より選手の運動量が多く、異なるスペースを支配し、より多くの選手がゴール前に顔を出す。基本的なコンセプトは同じであっても、その実践方法は他にもあるのだ。

 スペインのW杯出場に問題はないだろう。だが予選の数字とプレー内容は異なる問題だ。そして今の段階からプレー内容を改善していかない限り、スペインは後に高い代償を払うことになりかねない。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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