「陸上界を変える」ならマラソンを 青学大・下田、東京五輪への思いを語る

加藤康博

今しかできないことを大切にしたい

今季前半はフォームの修正に注力。思うような結果を出せずにいたが「少しずつ良くなっている」と手応えを感じている 【スポーツナビ】

――今年の前半戦はあまり調子が良くないように見受けられました。何か理由はありますか?

 自分はフォームがきれいではないんです。このままだと上のレベルにはいけないので、東京マラソン後、原監督、トレーナーの中野ジェームズ修一さんと話し合い、フォームの修正に取り組んでいました。上半身と下半身をうまく連動し、ストライドを自然に広げていくことが目標です。それ自体は少しずつ形になっていきました。ただ、今までよりも上半身を使うので、より強いコア(体幹)の筋力が必要になります。それに気がつかず練習を続けていたのですが毎回、後半に走りを崩し、メニューを消化できなかったんです。先ほど言ったように自分は練習を積み上げて強くなるタイプなので、今季前半が良くなかったのは、練習ができていなかったからだと思います。マラソンを走ったダメージで走れなかったとは思っていません。でもその後、コアの筋力をさらに高めるためにジェームズさんのジムに毎週通って鍛えてきたので、少しずつ良くなっています。夏は去年と同じレベルの練習ができました。

――下田選手にとって駅伝とマラソンをどのように位置付けて競技をしていますか?

 青山学院大に入った時点の目標が箱根駅伝での優勝。それは今も変わりません。まずは学生として今しかできないことを大切にしたいと思っています。マラソンに本格的に取り組むのは大学を卒業してからです。ただ箱根駅伝の23キロは必ずマラソンにつながりますし、今年度もマラソンを走りたいと考えています。

――19歳でのマラソンの経験は下田選手にとってどんな意味を持ちますか?

 2015年の世界選手権も19歳(当時)のギルメイ・ゲブレスラシエ選手(エリトリア)が勝ちました。世界記録を狙うのであれば話は違うと思いますが、暑い中、2時間10分台で優勝が決まるようなレースではあまり年齢は関係ないと思います。ただ早くにマラソンを走って気がついた点も多く、今後の練習に生かしていけますし、周囲にインパクトを与えられたのは良かったですね。

(東京マラソンの)結果についてはラッキーだったと自覚しています。内容では30キロ以降で抜け出した服部勇馬さん(当時東洋大4年、現トヨタ自動車=2時間11分46秒で日本人4位)のほうが何倍も良いレースでした。マラソンを走る上での課題がたくさん残されているので、今後はそれに向き合っていくつもりです。

五輪は残酷、だからこそ魅力がある

コツコツと練習を積み重ねるスタイルを大切にしたいという下田。4年後のメダルを目指してこれからも走り続ける 【スポーツナビ】

――2020年東京五輪の目標を教えてください。

 メダルです。実はリオ五輪を見るまであまり五輪への思いは強くなかったのですが、4年に一度の戦いってプレッシャーも厳しいし、残酷だけれど、だからこそ見ている人を引き付ける魅力があるんだなと感じました。今回、日本は4×100メートルリレーでメダルを取りましたが、マラソンで結果を出せればインパクトも強いはずです。そこを目指します。

――そのためには今後、どのような計画で強化を進めていきますか?

 ひとつずつ目の前の課題をクリアしていくだけです。自分は高校時代、5000メートルの全国リスト100位にも入っていない選手で、青山学院大に入った時も同学年12人中、10番目の選手でした。それでも3年生で箱根駅伝を走りたいと思い、必要な練習に取り組んでいたら、少しずつ目標が早く達成され、今まで来ています。だからこれまで通りのスタンスで練習を継続していくつもりです。自分の強みは故障しにくい体と、走りに対する熱い気持ち。特に気持ちの部分が切れなければ目標に向かっていけるので、そこを大切にしていきたいです。

プロフィール

下田 裕太(しもだ・ゆうた)
1996年3月31日生まれ。青山学院大3年。
2年時から頭角を現し、昨年度は学生三大駅伝すべてに出場。全日本大学駅伝5区、箱根駅伝8区でそれぞれ区間賞を獲得した。2月の東京マラソンでは10位(日本人2位)。この時のタイム2時間11分34秒は10代日本最高記録となった。

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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