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クルム伊達「強いメンタルがすごく大事」
先駆者のみが知る、世界で戦うための条件

錦織は「異次元に来ている」

日本のテニス界をけん引する錦織(写真左)とは、12年全豪オープンの混合ダブルスでペアを組んだこともある
日本のテニス界をけん引する錦織(写真左)とは、12年全豪オープンの混合ダブルスでペアを組んだこともある【写真:ロイター/アフロ】

――今の錦織選手がそうであるように、90年代は伊達選手が日本を背負い世界で戦っていました。当時と今とで、取り巻く状況に変化を感じますか?


 テニスに限らず、日本人やアジア人に対する見方も変わったと思います。今は日本がすごく身近になったし、日本を知ることもできるようになった。でも、例えば米国だったら、私の頃は(日本人アスリートといえば)野球の野茂(英雄)さん、ゴルフの岡本綾子さんや青木功さんとか、そのくらいで。今のように世界で活躍している選手が本当にいない時代だったから、本人たちに掛かるプレッシャーはもちろん大きいし、テニスにおいても「日本人が世界で活躍できるはずがない」という空気はすごく感じました。


――錦織選手が感じているであろう周囲の期待や重圧は、伊達選手にしか理解できないのではと思いますが、どういったものなのでしょうか?


 彼は本当に異次元に来ています。普通のことでは喜びや満足感が出てこないと思うんです。グランドスラムの決勝にいくとか、優勝するとか、トップ4に勝つとか、彼の先はもうそこしかありません。でも、それがどれだけ大きな壁なのかは、本人しか分からないものがあると思います。それをやり遂げることの厳しさ・難しさは、世界も時代も違いますが、私もグランドスラムのセミファイナルを経験したという意味では多少なりと想像はつきます。今、ここまで上がってきたことの何十倍も大変なことだとは思います。


――残りわずかしかない壁が、とてつもなく高いと。


 私が4位になった時も「あと3人しかいない」と言われましたけれど、その3人が100人以上の大きなものに感じたので、(錦織選手も)同じ状況じゃないかなと思います。確固たるジョコビッチがいる。でも、ナダルにしても、フェデラーにしても今けがをしていて、少し(序列が)崩れてきています。そういう意味ではチャンスといえばチャンスですね。

テニスをやり尽くしたい

「もう一度元気に試合がしたい」。熱い思いを胸に、クルム伊達はリハビリを続けている
「もう一度元気に試合がしたい」。熱い思いを胸に、クルム伊達はリハビリを続けている【写真:赤坂直人/スポーツナビ】

――「若手に刺激を与えるため」に現役復帰されたわけですが、8年経った今、現役を続ける理由は?


 今はもう自分のためですね。私が経験してきたことを聞いてくる選手には、もちろん隠すことなく話はします。でも、刺激というレベルはもう超えてしまっているので。今は自分がテニスに対してやりたいと思うことを、やれるところまでやり尽くしたいっていう、そこだけですね。


――そこまで伊達選手をひきつけるテニスの魅力とは何でしょうか?


 テニスというスポーツの素晴らしさは、やはり一度テニスを離れて、客観的に見たりプレーする中で、初めて気づいたことではありました。だからこそ、今は素直にテニスが好きで、テニスに対する情熱を持ち続けていられるのかなと。そこに尽きると思います。若い選手のように勝たなければいけないわけでもなく、ランキングをどこにしたいという目標に縛られているわけでもない。いつでも辞めることはできます。でもある意味、続ける気持ちさえあれば続けることもできるんです。


――伊達選手のように、日本のテニスプレーヤーの顔になるような女性選手が、今後出てきてほしいという思いもあるのでは?


 そうですね。でも、ジョコビッチ、フェデラー、ナダルもそうですけれど、ただ強いだけではそういう存在にはなれません。錦織君もそうですが、やはりコートに立った時に華がないと、見てくれる人たちを本当に引き寄せる力は生まれてこない。プロテニスプレーヤーとしてやっていくには、ただ勝つだけではなく、コートの中で何が表現できるかが求められていると思います。


――最後に伊達選手の今の目標を教えてください。


 今はとにかくコートに戻ることに尽きるのかなと思いますね。コートに戻れるのは来年の春くらいという、漠然としたものがあるものの、本当に戻れるかはその時期になってみないと分からないので、それに向けて今はとにかくリハビリを続けています。膝のことを100パーセント気にしないで、というのはもう無理とドクターから言われているので、極力気にしないで、もう一度元気に試合がしたいなと思います。それが今言えることですね。復帰したら、その先のことを考えたいと思います。


(取材・文:小野寺彩乃/スポーツナビ)

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