DeNAを初CSへ導いたラミレス監督 選手起用で見られた計画性とデータの重視

日比野恭三

監督の口からデータがすらすら

時にはマウンドに足を運び選手たちを鼓舞する場面も。計画的かつ、基づいたラミレス采配が11年ぶりのAクラスへと導いた 【(C)YDB】

 こうした「計画的選手起用」とともにラミレスDeNAの特徴として挙げられるのが、徹底したデータ主義だ。

 囲み取材などでは、ラミレス監督の口から、打者の左右投手別の対戦成績や得点圏打率などの数字がすらすらと出てくる。試合数を重ねた終盤に入るにつれてサンプル数も増え、データの信頼性はおのずと向上してきた。

 たとえば外野手のレギュラー争いは当初、相手投手が右腕か左腕かによって、その試合に出場する選手が決まる傾向があった。今になって思えばデータの蓄積段階にあったということなのだろう。交流戦を終えるころには1番・センターに桑原将志を起用する方針を固め、相手投手の左右に問わず同じ打順とポジションで起用し続けた。

 8月30日、マツダスタジアムでの広島戦前には「(先発の)井納(翔一)はこの球場で非常にいいピッチングをしていて、2勝1敗、防御率も2点台前半だと思う。自信をもってゲームをつくってくれるはずだ」とさらりとデータを紹介したうえで、不振のクローザー山崎康晃の起用法について、こう語った。

「ホームでの防御率は6点台以上だがマツダスタジアムでは1点も許していないので、ここでは問題ないと思っている。彼をベストな状況、勝ちにつながるところで使いたい。そのために数字も深いところまで掘り下げている。どの球場でどんな数字を残しているかといったことも含めて、ヤス(山崎)を使っていきたいと思っている」

球場との相性を重視

 この言葉によく表れているように、ラミレス監督のデータ観で興味深いのは「球場との相性」を重視している点だ。自身が現役時代に体験した「プレーのしやすさ」を根拠に、誰がどこの球場で気持ちよくプレーできるか、結果を残せるのかを見極めて自在に選手を起用している。

 その観点に立てば、CS進出が決定した今、ファーストステージをどこで戦うかが大きな意味を持ってきそうだ。3位進出なら2位・巨人と東京ドームで戦うことになるが、今季は2勝6敗1分と分が悪い。ラミレス監督も「タフな戦いになる」と読んでいるだけに、わずかに残されている2位進出の道をあきらめるわけにはいかない。

 初のポストシーズンを前に、指揮官は気持ちを引き締めていた。
「シーズン当初は選手のことを理解しているつもりだったが、それだけでは足りず、分析により多くの時間を割いてきた。今は起用している選手に対して自信を持っている。ここからはまず、巨人とどう戦っていくかということに集中して、分析を始めていきたい。全力で2位を狙っていく」

 まずは直接対決の残り2試合(9月23日/東京ドーム・同24日/横浜スタジアム)。次なる目標、横浜スタジアムでのCS開催を目指して、全力で勝ちにいく。

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著者プロフィール

1981年、宮崎県生まれ。2010年より『Number』編集部の所属となり、同誌の編集および執筆に従事。6年間の在籍を経て2016年、フリーに。野球やボクシングを中心とした各種競技、またスポーツビジネスを中心的なフィールドとして活動中。

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