【UFC】批判勢力を黙らせろ! 賛否両論CMパンク WWE王者がついにUFCデビュー!

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戦績なし、格闘スポーツ歴なし、異例ずくめのメジャーデビュー

格闘経験まったくゼロのパンクが、ミッキー・ガル(右)との試合でどんな戦いを見せるか 【Zuffa LLC】

 プロレスラーがMMAに転向することは決して珍しくはない。中には桜庭和志やダン・スバーン(米国)、ケン・シャムロック(米国)、ブロック・レスナー(カナダ)など、MMAファイターとして大成した選手もいる。中邑真輔、永田裕志、高山善廣、小原道由、谷津嘉章、クラッシャー・バンバン・ビガロ(米国)、バティスタ(米国)など、一度限り、ないし、ある時期のみMMAにチャレンジしていた選手もおり、インディシーンまで含めるとおそらくその数は合計で100名を下らないとみられる。成功の度合いは人それぞれだが、MMAに挑戦するプロレスラーの共通点としては、アマレスなど他競技で少なからずの経験や実績があり、リアルファイトの腕にある程度の根拠があるケースがほとんどであった。

 戦績0勝0敗の選手がUFCに登場したことも、前例がないわけではない。プロボクサーのジェームス・トーニー(米国)、柔術の天才B.J.ペン(米国)、カレッジフットボール選手だったマット・ミトリオン(米国)、高校・大学時代にレスリングをしていたマット・リドル(米国)らがいた。しかし、やはりいずれの場合も、他のスポーツでの実績を踏まえての鳴り物入りでのデビューだった。

 ところがCMパンクにはプロレス以前のスポーツの実績がない。プロレスラーの中にはリング上の勝ち負けとは別に、実は腕っ節が強く、バックステージで恐れられているらしいとか、酒場のケンカでめっぽう強いらしいといった武勇伝や都市伝説が聞かれる選手がいるが、パンクにはそのたぐいの話もない。

UFC 203 【Zuffa LLC】

 特に格闘スポーツの経験がなかった人が、充実した本業がありながら、ある種、退路を断って一定期間をMMAのトレーニングにささげ、大舞台でいきなりのデビューを果たした事例は確かにある。しかしながら、本気で総合格闘技の最高峰を目指して努力するMMAファイターが他に数多いる中で、知名度があるとはいえ、格闘技未経験者が出場するのは世界最強をうたうスポーツとしていかがなものかといった批判が多いのも確かだ。今回のパンクのUFC出場に際しても、米国では同様の厳しい議論が見られている。他方ではもちろん、パンクの出場によって、プロレスファンなどこれまでUFCを見たことがなかった層にも強くアピールするのではないか、UFCを広めるためには良いことなのではないかとの期待感も高まる。パンクはこう語っている。

「皆さんから何を期待されているのかがよく分からない。自分で自分に何を期待しているのかなら分かる。チームのみんなやコーチから何を期待されているのかも分かる。そこから先は、メディアやインターネットのどこを見ているかによって、期待していることが違ってくるんじゃないかと思う。中には僕なんかノックアウトされれば良いのにと思っている人もいる。30秒くらいでペシャンコにされてしまえと思っているんだ」

「僕自身が自分に期待していることは、3ラウンドかかろうが、3秒で終わろうが、とにかく試合に勝つことだ。それから、最高のコンディションでオクタゴンに上がること、そして試合前に最高にハッピーな表情で鏡を見て、こう思うことだ。“これ以上できることはない。ここまでよくやってきたじゃないか”」

 お得意の反体制派トラッシュトークをいまだ封印したまま、CMパンクはリアリティ番組の冒頭で、今回の試合の意義について次のように話している。

「僕は何のブラックベルト(黒帯)も持っていない。文字通りゼロからのスタートだ。昔から、いろいろなことにうまくなじめない面があった。でもそんな子供は世界中にたくさんいるだろう。僕はそんな子供たちに、できないことなどないんだということを伝えたい」

 プロレスラーとしては身体が小さく、マッチョマンタイプでもないパンクは、WWE時代にも大成は難しいとされてきたが、結局はファンを味方に付け、チャンピオンになって批判勢力を黙らせた。今回のパンクの旅路も困難を指摘する人が多い。しかし、パンクにはこの難所の切り抜け方は見えているのだ。

(文 高橋テツヤ)

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