ハリル「ハイレベルな予測が鍵になる」 W杯最終予選 UAE、タイ戦メンバー発表

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大島、浅野が何かをもたらす可能性は高い

ハリルホジッチ監督は大島、浅野に関して「A代表に何かをもたらす可能性は高い」と評価した 【スポーツナビ】

――長谷部が次の試合で100試合目を迎えるが、その長谷部に期待することは?

 長谷部はこのチームのキャプテンであり、この試合に勝利することを期待しているが、勝てば長谷部にとって良いプレゼントになる。模範となる、真のキャプテンだと私は思っている。100試合目で長谷部が点を取ったら本当に素晴らしい試合になるだろう。そしてさらに勝利することができれば、素晴らしいお祭りになると思う。代表キャップで100試合はまれなことなので、祝福したいと思う。前回は(100キャップを達成した)岡崎を祝福したが、長谷部に関しても、本当に人格もキャプテンとしても尊敬している。


――FWを7人選出した理由と、五輪メンバー2人(大島、浅野)への期待について

 7人のFWに関しては、浅野の状況が分からないことが心配だからだ。武藤もどのような状況かまだ分からない。合宿にきてから状態に気付くのでは遅い。長友と清武、原口は火曜日にしか日本に着くことができない。試合は木曜の夜だが、私の金曜の夜にしてくれという希望はかなわなかった。宇佐美も試合に出ていないのが不安要素だ。トレーニングはやっているが、疲労はあるようだ。コンディションの部分に不安がある。

 他の選手を呼ばない理由は、A代表で準備できる選手がいないからだ。サイドのアタッカーと真ん中でできるアタッカーをバックアップで考えている。特に浅野の状態が気になる。浅野は本当にこの合宿で使いたいと思っている。

 五輪は全試合見たが、ちょっとしたことで結果は変わったと思う。もっと良い結果が出せる可能性のあるチームだった。3試合で気になった選手は、A代表に入る資格があると思った。キリンカップのときには大島、浅野に関してはすでに確認していたが、五輪を見て再確認した。これからも若手を信頼する心を持ち続けたいと思っている。将来、大島と浅野がA代表に何かをもたらす可能性はかなり高い。

 もちろん他の選手もチェックしているが、まだこの合宿には呼ばない。例えば、35歳のバックアップメンバーを考えている。W杯の予選ということを考えれば緊急事態もあるからだ。W杯本大会に向けては、若い世代を育てて戦っていきたいと思っているが、最終予選では結果が求められる。若手をもっと使ってほしいということをJリーグのクラブに言いたい。五輪の選手の中で何人がクラブで先発出場していたのか、90分間試合に出ていなければ追い付けない。そういった部分も含めて、若手をもっと信頼して使ってほしいと思う。

W杯最終予選ではリスクを取れない

――川崎の35歳の選手の話があったが、彼のどういうところを期待しての選考か?

 理由は簡単だ。香川や清武がもしけがをした場合、私が見てきた選手の中で使ってもいいと思っている選手だからだ。(現在Jリーグにおいて)1位のチームで良いプレーをしており、信頼して当たり前だ。

 W杯の準備では、たくさんのことを予測しなければいけない。ぎりぎりのところでびっくりしてはいけない。特に今回は、私がここに来る直前にけがの情報が入った。しかしけがの可能性は予測に含まれていた。W杯最終予選ではリスクを取れない。ロシアの席を勝ち取らなければいけない。ハイレベルな予測がカギになってくる。悪いことに関して驚いていてはすでに遅いのだ。

――山口蛍がJ2に戻ったことで監督はかなり落胆していたが、今はどのように思っているのか? また、金崎の今後の対処については?(元川悦子/フリーランス)

 蛍に関しては、おっしゃるようにまったく喜んでいない。彼を元気づけるためにも私はドイツへ行ってきた。そして、伸びるためにも残って先発を勝ち取ってほしいと言ったし、向こうで良いプレーをするためのクオリティーはすべて持っていた。ドイツでしっかりと戦えば、A代表にとって興味深い選手になるはずだった。メンタルの面でしっかりとアダプト(適合)できなかったという状況だ。

 蛍に限らず他の選手もだが、もっとメンタルを前面に出してほしい。国内では楽にプレーできるしリスクも少ない。だから(J2に)戻ってくることに関しては高い評価はしていない。だが良い選手を簡単に手放すことはできない。彼はA代表で毎回素晴らしいパフォーマンスを見せてくれている。蛍のようにしっかりとボールを奪える選手はなかなかいない。J2でどのようにプレーしているかも3回ほど見てきた。ここにいるということは、彼が良いプレーヤーであるということだ。

 金崎に関して多くのコメントは必要ないと思う。彼の態度が私には受け入れがたい。A代表にとってだけでなく、全選手に言いたいが、こういう行動はA代表の基準に達していない。しかも彼はすでにA代表に入ったことがある選手だ。若い選手の良い例になるとは思えない。この先のことはまったく考えていない。まずはUAE戦の準備に集中しているので、その後にゆっくり考えたい。

なんとかなるだろうはもうやめてほしい

――準備の際にすべての不安要素を取り除きたいと言っていたが、これまで築きあげた信頼が前提にあってのことだと思う。これまで築きあげてきたものに、どれだけ評価しているのかを教えてほしい。(田村修一/フリーランス)

 私は常に楽観的だ。初めて21人のフィールドプレーヤーを選んだが、スタッフ全員でたくさんの試合を見て、いろいろなところに選手を探しに行った(結果だ)。

 私はW杯最終予選を戦った経験があるが、ちょっとしたディテールがすべてを決める。例えば今回タイに行くが、気温も高く湿度も高い。胃が消化不良になったり、風邪を引いたりと、気候がダメージを与える可能性は絶対に予測しなければいけない。

 浅野は普通であれば呼ぶべきではないかもしれないが、金崎を競争に入れていたが行動が問題だと判断したので浅野を入れた。宇佐美に関しては、フィジカルで準備ができていれば能力があるので、何ができるのか私たちは分かっている。どんなタイミングでも彼は違いを出すことができる選手だ。ただ、宇佐美を放っておくと、(何かあった時に)次の月曜にすぐ呼ぶことはできないので、その前に呼んでおかなければいけない。

 このリストを選ぶために全スタッフで本当に何日もかけた。その決断の末に、15分前にけが人が出たという状況だ。ただ、そうは言っても全国民が勝利を期待し、結果が出なければ私を批判する。それは当たり前のことだ。簡単ではないのは分かっている。オーストラリアでやったアジアカップの日本対UAEもさらに2回ほど見た。UAEはPKがなくても勝つ資格があったと思う。つまり私はどのような問題があるかもすべて予測しているし、ビデオも準備している。

 UAEの何人かの選手は素晴らしい選手だ。特にオマール(・アブドゥラフマン)という左利きの選手。正確さとスピードを持っている。ボスニア戦のように彼をフリーにし、10メートル離れたら、好きなところにボールを送ってくる。いろいろなことを準備し、選手に説明し、選手がそれを実現しなければいけない。それを全部やったとしてもうまくいかなかったら、すべての責任は私にある。2カ月かけて準備して、私はA代表のことよりもUAEの方が良く分かっている。

 五輪を見ると、全競技を含めると日本はメダル数が多く、スポーツ全体で言うとかなりレベルが高い。(男子)4×100メートルリレーでは、日本の選手が初めて米国を破った(銀メダルを獲得)。米国のスプリンターは1人で走ると誰よりも速い。ただ、日本は全員で戦ったら米国よりも強かった。そして勝てるという自信もあって彼らは臨んでいた。そういったことをA代表にも伝えたい。組織になったら日本は何でもできる。強い気持ちを持ってほしい。自分をリスペクトして、相手をリスペクトする。つまり、スポーツの面で違う性格を持たなければいけないということだ。このプロジェクトは全員が入らなければいけない。会長が最初に話した通り、日本全員で勇気を持ち、前に前に行く。われわれは最終予選を突破したい。

 何とかなるだろうはもうやめてほしい。そういったことからリスクが生まれる。われわれは予選突破の候補ですらない。なぜなら他の対戦国の方が強いからだ。これからたくさんのことが起こる。相手が簡単に「どうぞ」とは言わない。

 UAEのことは全て把握しているが、2カ月間A代表の練習をしている。そして、合宿のオーガナイズも完璧にできる国だ。政府も含めてだ。その政府がA代表を予選突破させたいと言っているし、黄金世代とも呼ばれているチームだ。そして、U−20の世界大会で準決勝まで残った世代だ。そして日本は「何とかなるだろう」と思っているわけだ。全員がかなり動かないと勝てないだろうと予想している。いろいろな難しさも内部に含まれているが、そんなことは関係ない。勝ちに行く。勝利だけだ。

――アジアカップのUAE戦での失点シーンは、アーリークロスから森重と吉田の裏を突かれ、最後に逆サイドの選手に決められた。そういった問題は意識や戦術で対応できるのか? それともスピードがある選手による対応が必要なのか?(河治良幸/フリーランス)

 あのシーンはたしか3つのアクションが重なったはずだ。オマールと一番怖い選手である7番(アリ・マブフート)が3回ほどフリーになった。そして毎回この2人の選手で完結している。つまり10番(オマール)と7番を追跡して予測しなければならない。すでにビデオを用意しているし、これから選手にも説明する。10番のオマルをフリーにすると、30〜50メートルのパスがすごく正確だ。そして彼がボールを持った瞬間に、1〜3人が背後へ走る準備をする。そして誰がどのようなポジションで、どのように走るのかも把握している。それはもちろん選手にビデオも見せ、トレーニングに落とし込むが、試合で90分間集中を続けなければいけない。

 それから、われわれの長所であるオフェンス面でも見せないければいけない。われわれはより良い攻撃がより良い守備につながると考えている。ただ、おっしゃる通り、この試合では何人かの選手が特別に目覚めなければいけない。そのUAEとの試合では3回とも全く同じアクションだった。2回はエイジが止めたが3回目はやられた。われわれスタッフでUAEの試合を10数試合を見たし、前回のUAE戦も2回見た。3回目ももう一度見たいと思っている。

※質問者に関しては、掲載許諾の確認が取れた方のみ明記しています。記名のない方は確認が取れていない方ですので、拒否されている訳ではありません。

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