【UFC】雪辱に燃える静かなるマクレガー あえての打撃大戦争に腕を伏す水垣
「結局、カネになるのはスキル」
「UFC 202」でネイト・ディアスと戦うコナー・マクレガーがいつになく大人しい 【Getty Images】
成金趣味のスーツに派手なサングラス、舞台上で相手に食ってかかるような態度、独特のくせの強い辛辣(しんらつ)なトラッシュトークなど、これまでマクレガーを特徴づけてきたトレードマークはことごとく影を潜め、今回のマクレガーは試合前のメディア対応の回数自体も減っている上、ようやくインタビューに応じたと思えば、ポロシャツに銀縁メガネという受験生のような風体で、前回の試合を淡々と振り返っては、反省や分析を口にするばかりなのである。本人に言わせると「前回はあらゆる面でやりすぎたし、遊びすぎた。今回は中庸路線で、自分のやるべきことをやるだけだ」とのこと。さらに、こうも語っている。
「トラッシュトークによる心理戦でも、ある程度有利には立てるが、結局カネになるのはスキルなんだ」
「前回はネイト・ディアスの頑丈さが十分に分かっていなかった。しかも彼はとても経験豊かなファイターで、オレの全試合数よりもたくさんの試合をUFCでこなしてきている。加えて、あの身長とリーチ、反応の良さも甘く見ていた」
マクレガーとディアスに友情の芽生え
戦え、さもなくば学べ
「前回と同じことをやって、違う結果を期待しても仕方がない。だからオレは、練習の構造を変えた。休むことも計画に入れて、休息を不安に思わないようにした。1日8時間ジムに入り浸るのもやめて、メリハリをつけて練習するようにした」
「今回初めて、相手を想定した練習をしっかりとやってきた。サウスポーで背の高いボクサーをスパーリングパートナーに雇ったんだ」
グラウンドに弱みがあるのでは、との指摘に対しては「確かにネイトの寝技は優れているが、われわれの差が柔術にあったとは思っていない。やはり、頑丈さと経験の差だったとみている。試合の序盤でテイクダウンされたとき、オレは簡単にスイープできたんだ。それでも一応、オレは自分より重くて、柔術がうまいスパーリングパートナーを雇った。これで試合後半の柔術にも対応できるはずだ」と述べたマクレガー。
ちなみに、ジョン・カヴァナーが最近出版した書籍のタイトルが『Fight or Learn(ファイト・オア・ラーン)』であることは、さすが商売上手なマクレガー陣営だと思わせる。
マクレガーは今回の試合をきっかけに、ラスベガスに自分専用のジムを作り、コーチ陣やトレーニングパートナーなどのスタッフをアイルランドから大挙呼び寄せ、家2軒を用意して住まわせている。今回の試合の準備だけで総額約3,000万円がかかったという。その姿は、まるで試験前に「オレはこれだけ勉強をしてきた」と自ら言いふらしている学生のように見える。本人は負けるなどということは、つゆほども想定していないのかもしれない。しかし、これでもし再び負けることとなったら、目も当てられないのではないか。マクレガーは本当に勝てるのだろうか。