【UFC】雪辱に燃える静かなるマクレガー あえての打撃大戦争に腕を伏す水垣
マクレガーにとってプライドを懸けた戦い
同じ大会に出場する水垣偉弥はこの試合について、やはり階級差は埋めがたいとみて「ネイトのノックアウト勝ち」と予想する。今回の試合はマクレガーにとって、相手が憎くて戦うわけでもなく、タイトルとも無縁。あえて言えばプライドを懸けた戦いであり、ファイターとしての成長のための通過儀礼なのである。マクレガーは本当に、宣伝文句通りのスーパースターなのだろうか。前回の敗戦は、練習で修正できるような単なるミスにすぎなかったのか。マクレガーはそうした疑念を、勝つことで晴らそうとしている。そんな試合にトラッシュトークはいらないのだ。
ガーブラント、水垣を踏み台扱い
水垣偉弥はコーディ・ガーブラントと対戦する 【Getty Images】
「ドミニク・クルーズは最近、オレを気絶させてやると言ったらしい。オレのことなんか知らないというフリをしている場合ではないと、ようやく理解したのだろう。クルーズにその言葉をそのままお返しする。クルーズはオレとの試合でアゴを砕かれ、しばらくの間、ストローで食事をすすることになる」
「オレはバンタム級で最も話題のファイターだ。無敗でノックアウト勝ちを続けている。それに一番カネになるファイターでもある。ドミニクもバカじゃないから、オレが強敵であることを知っているんだ」
あえて水垣戦について語る言葉も、あたかもクルーズとのタイトル挑戦権獲得のために形式的に必要な手続きであるかのような言いぶりだ。「ミズガキはWEC(ワールド・エクストリーム・ケイジファイティング)からずっとやっているベテランで、今でも危険な相手だ。ミズガキは正面から勝負してくるタイプだから、今回は動き続けるつもりだ。ただ、彼のようなタイプは自分にはおあつらえ向きなんだ。確かにタフな選手だけど、これまでオレのようにパンチができる選手と戦ったことはないだろうからね」
水垣「打撃の展開から逃げるんじゃないぞ」
そして、あえてガーブランドにトラッシュトークを仕掛けてもらえないかと頼んだところ、そういうことは苦手だとしながらも、水垣は「打撃の展開から逃げるんじゃないぞ」と語った。ガーブランドのボクシングの強さは自他共に認めるところだが、水垣はその打撃で「逃げるな」と言っているのである。目の前の試合をとにかく勝つことにかけては、ガーブランドの比ではない経験値を持つ水垣。ガーブランドにとって得意科目である打撃であえて勝負を挑むことで、勝負の本当の怖さを植え付け、相手の心まで折る作戦なのか。それともガーブランドの勢いに抗しがたく、踏み台となってしまうのか……。世代闘争的な意味合いも帯びつつ、火の出るような大打撃戦の予感に満ちた必見の一戦である。
(文:高橋テツヤ)