今季のプレミアリーグは「監督の祭典」 何人が泣き、最後には誰が笑うのか?

山中忍

国際色豊かな実力派監督がそろう

マンCの新指揮官に就任したグアルディオラ(中央)を筆頭に、今季のプレミアには国際色豊かな実力派監督がそろった 【Getty Images】

 8月も半ばを過ぎ、プレミアリーグ2016−17シーズンの幕が開いた。今季は「監督の祭典」が開幕したと言ってもよい。

 プレミアの母国民にすれば、国産監督の少なさが悩ましい部分はあるだろう。イングランド人はアラン・パーデュー(クリスタル・パレス)、エディー・ハウ(ボーンマス)、ショーン・ダイチ(バーンリー)の3名のみ。そろって残留が第1目標というチーム事情でもある。

 しかし、総倒れに終わった昨季からの復活を期する“メガクラブ”勢を筆頭に、国際色豊かな実力派監督がそろう現状には、サッカーファンとして興奮を覚えずにはいられないはずだ。

 シティとユナイテッドの両マンチェスター勢は、それぞれジョゼップ・グアルディオラとジョゼ・モウリーニョという、スペインとポルトガルが生んだ現役クラブ監督界の両巨頭が新監督になった。チェルシーのアントニオ・コンテは、例年になく小粒な祖国イタリア代表を今夏のユーロ(欧州選手権)でベスト4入り目前まで導いたばかりだ。

 フランス人ながらプレミア歴20年のアーセン・ベンゲルは、アーセナルでの最後になるかもしれない意地の現契約最終年。昨秋にドイツを離れたユルゲン・クロップはリバプールで初のフルシーズンに挑む。この5名だけで、欧州主要リーグとチャンピオンズリーグ(CL)での優勝回数は合わせて27回に上る。

優勝はモウリーニョ率いるマンUか?

攻撃と守備、若さと経験値のバランスがいいマンUが優勝候補の筆頭か? 【Getty Images】

 そこにトッテナムのマウリシオ・ポチェッティーノが割って入る。44歳のアルゼンチン人監督はプレミアリーグ優勝に迫った昨シーズン終了時点で、マンUやチェルシーの引き抜きもうわさされた。ポチェッティーノ体制3年目のチームは大幅なてこ入れがなくとも、昨季リーグ得点王のハリー・ケインがリードする攻撃力と、昨季リーグ最少失点数(タイ)の守備力を備えている。

 ちまたではマンCの優勝を予想する声が多い。グアルディオラ効果と言えるが、信条とする後方から徹底的につなぐスタイルは一朝一夕で浸透させられるものではない。事実、新監督はサンダーランドとの開幕節(2−1)で、足元が心もとない昨季までの守護神ジョー・ハートをスタメンから外す決断を強いられた。バンサン・コンパニやヤヤ・トゥーレなど、主力には世代交代も必要。DF史上最高とも言われる額で競り落とした新センターバック(CB)のジョン・ストーンズはボールの持てる22歳だが、指揮官には持ち過ぎなどの判断ミスを成長の糧として理解する信望強さも求められる。

 優勝はモウリーニョ率いるマンUがもぎ取るのではないだろうか? 過去2年とは違う明確なプランに沿った今夏の補強で、攻撃と守備、そして若さと経験値のバランスが良いチーム像が浮かび上がっている。第1節でも新1トップのズラタン・イブラヒモビッチにトップ下のウェイン・ルーニーと、決めるべき人物が決めてボーンマスを料理し(3−1)、幸先の良いスタートを切ってもいる。

 ビジャレアルから加入したCBのエリック・バイリーは、2年前にネマニャ・ビディッチが去って以来の力強さを最終ラインに加えられる存在。また、世界最高額の移籍金を要したが、ポール・ポグバはマンUの中盤中央に欠けていた相手ゴールを脅かすエネルギーを長所として持つ。優勝争いがきん差であればあるほど、モウリーニョの3度のプレミア優勝経験と神経戦のうまさも物を言うだろう。

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著者プロフィール

1966年生まれ。青山学院大学卒。西ロンドン在住。94年に日本を離れ、フットボールが日常にある英国での永住を決意。駐在員から、通訳・翻訳家を経て、フリーランス・ライターに。「サッカーの母国」におけるピッチ内外での関心事を、ある時は自分の言葉でつづり、ある時は訳文として伝える。著書に『証―川口能活』(文藝春秋)、『勝ち続ける男モウリーニョ』(カンゼン)、訳書に『フットボールのない週末なんて』、『ルイス・スアレス自伝 理由』(ソル・メディア)。「心のクラブ」はチェルシー。

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