履正社、横浜との横綱対決を制した理由 先発を読み違えても…対応力に自信あり

楊順行

味方の援護で「余裕できた」寺島

2回の味方の援護に「余裕ができた」と横浜の強打線に付け入る隙を与えず、6安打1失点に抑えた履正社・寺島 【写真は共同】

 履正社はさらに、2死一、二塁でリリーフした藤平から北野秀が2点タイムリー二塁打。横浜を土俵際まで追い込んだ。

 これで、寺島も乗ってくる。「自分のピッチングをする余裕ができた」と、ベースから離れた右打者には外角ストレート、左打者には小さく変化するスライダー(もっとも、寺島本人は「スピード差をつけた直球」と言うが)を駆使して強力な横浜打線に連打を許さない。

「変化球を見せて、うまくストレートで詰まらせることができました」(寺島)と言うように、終わってみれば2本のヒットを許したのは9回だけ。散発6安打1失点で、堂々と寄り切った。

惜しまれる2回の2度の中断

2回途中から2番手で登板した横浜の152キロ右腕・藤平。先頭打者・北野にタイムリーを打たれたものの、以降は得点を許さなかった 【写真は共同】

 横浜にとって惜しまれるのは、2度の中断があった2回の5失点だ。「中断という条件は相手も同じ」(横浜・平田監督)というのは大人の発言で、高校生にとっては「影響は、普通にありました」(石川)というのがホンネだろう。なにしろ、失点したのはこの回だけなのだ。大相撲なら、“取り直し”を見たい、というところだったが5対1、履正社の完勝だった。

「相手は点を取るのが難しいピッチャー。石川と僕の2人で5点取られたのが敗因です」と笑顔で絞り出す横浜・藤平。「悔しいし、泣きたい気持ちはある」が、ロング救援で3回以降は無失点に抑えたのは、横綱のマウンドを背負った矜持か。

 くしくも神奈川と大阪の地方大会は、決勝が同じ7月31日。公家を通じて知り合った藤平と寺島はその前日、「お互いに甲子園に出場し、高校野球を盛り上げよう」と、LINEでエールを交わしたのだとか。

 東邦高(愛知)のミラクルサヨナラ劇、そして横綱対決で沸騰した高校野球は、3回戦を迎える15日から、ますます盛り上がる。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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