松田丈志「これで競泳大国と言える」 4×200mリレー銅メダル後コメント

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小堀「ベストレースができた」

 ちょっと予選が終わったときには「やばいな」と思っていました。予選のレースが終わってから、(松田)丈志さんが「相当な覚悟でいかないとメダルは取れないから、これからの何時間、本当に強い気持ちを持っていこう」と話してくださって、僕自身その言葉を受けて「僕は本当にここへ何をしに来たんだ」と考えました。リレーで組めるということになってから(海外で調整していた萩野以外の)3人で練習してきて、もともと僕は練習に身が入るタイプではないんですけれど、丈志さんも江原くんも毎回のように「おいおい、頑張れよ!」と発破をかけてくれました。僕自身「頑張らなくちゃ」と思えました。江原くんが盛り上げてくれて、丈志さんが僕らを引っ張ってくれるような練習を見せてくれたり、本当に僕一人ではここまで来られなかったと思います。

この大舞台でベストの泳ぎを披露した第3泳者の小堀 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

(苦しい時期もあった?)和歌山、三重と(大会前に出場した県選手権で)納得のいくタイムが出なかった。正直やってきたことがどうなのかと考えたときもありましたし、本番に向けて不安もありました。でも毎回毎回の練習で、自分の中では苦しいときでも諦め切れない部分があって、いつも以上に追い込めていた。自分の中では、良くない時期があったとしても、本番では必ずタイムが出せるんじゃないかという自信もどこかにありました。それが最後、コースに立ったときに自分を信頼できる要因になっていたと思います。

(今日のタイムはベストですよね?)そうですね、1秒くらいは縮まっていると思います。この4カ月を過ごしてくる中で毎回のように「メダル取りたい」「メダル取りたい」と思ってやってきたので、最後に自分の力以上のものを出せる気がずっとありました。自分の中ではベストなレースができたんじゃないかと思います。

(第2泳者の)江原くんは良い位置で来てくれると信じていましたし、レース中も(第1泳者の)萩野くんや江原くんの泳ぎはあまり見ないようにして、本当に自分のレースに集中しようと思っていました。結果として1分45秒台で引き継げたので、自分の役割は果たせたのかなと思います。

(予選とのタイムの違いは)リレー種目なので、できるだけリラックスして泳ごうと思っていたのですが、それがちょっと裏目に出てしまっていました。体重が前に乗らなくてスピードも出なかったので、そこを決勝までにしっかり修正しました。最後のアップは平井(伯昌)先生にも見てもらって、本当に助けていただきました。

(レースとしては狙い通りだったのでは?)前日、萩野くんが200(メートル自由形)を終えて帰ってきてからもチームのみんなで話をしました。200の結果を見て、「米国の力が抜けている」というのは分かっていたので、そこを無理に狙うよりも堅実にメダルを狙いにいこうということを話しました。その結果、得た答えが2コース、6コースくらいに残るのが一番波にも左右されずに自分たちのレースができるというのがあって、予選でそれができたので、チームとしては作戦通りでした。(泳ぐ順番も良かったですよね?)神風が吹きましたね(笑)。

江原「3人の力を借りて取れたメダル」

第2泳者の江原は懸命の泳ぎで次の2人に思いを託した 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

(泣いていたが?)いや分からないけれど、安心したからですかね。そんなに出ていましたか? 僕もう涙もろくて……。僕のレースも「落ち着いて入れよ」と言われていたのに、前半からすごくいってしまって。でもやらなきゃいけないレースだったので、しっかり後半粘らなきゃと。着いた瞬間は悔いの残るレースだったところと安心したところと。そのあとの二人がすごく頼もしくて、それを見ていたら何かもう……(泣けちゃった?)いつから涙が出ていたのかは覚えていないんです。

(ペース配分はどう考えていた?)予選は予定通り47秒0くらいで泳げればいいと思って実際にそのくらいで楽に泳げました。決勝はもっと(タイムが)出るなと思っていたのに、ラップが出たら思っていたよりも遅くて。チームに影響が出ないか少し心配になってしまったのですが、後の2人がしっかり泳いでくれて助かりました。

(最年長の松田選手から言われて印象的だったことは?)あまり言葉で引っ張っていくというか、伝えてくれる方ではないと思います。でも練習中の気迫だったりオーラがあって、本当に腹をくくって五輪のためにできることをこの3カ月間見せてくれました。もう練習の取り組み方から「絶対にメダルを取りたいんだな」というのが伝わるオーラが出ていて、僕も小堀くんもそれに続かなければいけないという気持ちになって、気が抜ける暇なんてなかったですね。僕は(代表の決まった)選手権が終わってから浮き足立っていた部分があったと思うのですが、丈志さんから「メダルを狙える位置にいるから頑張ろうな」と言われて……。僕にとっては初の五輪で、出られるだけでちょっとうれしがっていたところに活を入れられたというか。メダルを狙わせてくれた。そのしっかりした目標をもらえたことが僕たちを強くしてくれたと思います。

(代表になってから変えたことはあるか?)僕のレースプランは、自分が飛び抜けて泳ぐというのが楽だったんですけれど、やっぱり世界の選手を相手にするとなると前には出られないですし、練習していても競り合うことが多かったので。今まで大学で練習しているときは競って練習することもなかったので、自分を過信していた部分もあったのですが、いざ3人と練習すると負けることもあって、いけるときもあって。3人で競って練習できたことが、世界の舞台であまり縮こまることなく、隣で同じくらいの速い選手がいたり、追い越されたりしても落ち着いてレースができることにつながったと思います。

(メダル獲得で今後のモチベーションに変化は生まれそう?)今の一番の気持ちは「ホッとした」というのが大きいんですけれど、自分1人では取れないもので、3人の力を借りて取れたメダルだったので。でも、中村克(イトマン東進)も(4×100メートルリレーで)47秒台を出しましたし、日本の自由形が本当に世界で戦えることが見えてきました。僕は(7日に行われた)400メートルを泳いで全然だめだったのですが、個人としてもっと戦えるようになっていきたいです。この8継(4×200メートルリレー)でも、来年の世界選手権、そして4年後の東京五輪でもっといいメダルを取れるようにしたい。そのメンバーに入りたいですし、五輪が終わってからも丈志さんや3人でやって教わったことを生かしていきたいと思います。

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