清宮幸太郎、ちょっと短かった2年目の夏 8強で敗退に「甲子園は遠くて難しい」

清水岳志

今大会は3本塁打8打点と文句なし

5回戦の国士舘高戦では高校通算53号本塁打を放つなど、今大会3本塁打8打点と文句なしの結果を残した 【写真は共同】

 今大会は12打数7安打3本塁打8打点9四死球、打率5割8分3厘。勝利を決定づけるホームランも打ったし、チャンスも作った。数字としたら文句ないだろう。しかし、「最後に打てなかったので、まだまだです。あの打席は絶対に忘れないようにしたい。日本一のバッターになる道は長いんで、この負けを心の底に刻んで意味あるものだったと言えるような野球人生にしたい」と反省の言葉が出る。

 昨年、早稲田実と対戦した日大三高や東海大菅生高は清宮を意識するあまり硬くなって自滅した印象がある。だが、この日の八王子高は攻守とも硬さがなく、リベンジに燃えていた。早稲田実が受け身になっていた。

 話題先行の「清宮物語」に早稲田実がチームごと勢いに乗っかっていた昨年、無我夢中で上級生についていった昨年。1年経って夏は阻まれた事実。「甲子園は遠い場所。難しさを実感した」と清宮はいう。だが、早稲田実にとっても、清宮にとってもそれはひとつの成長だったのではないだろうか。

 1年生の野村大樹が溌剌(はつらつ)とできたのは清宮の存在が大きい。ゲーム前のアップも2人がコンビを組んだ。緊張していた初戦・啓明学園高戦、「ボールをよく見ていけ」とアドバイスをされて、野村は我に返ったという。また、2戦目の秋留台高戦は「コースに逆らわず右を狙え」と言われて、レフト方面の打球だったが、結果は3ラン。

「清宮には弟がいて自分はお兄ちゃんだから、後輩との付き合い方がうまいんじゃないかな」と和泉監督はいう。

 昨年、1年生でチーム内に溶け込んでいたムードメーカーだった。キャプテンの加藤雅樹(現早大)らがやりやすい環境を作ってくれた。清宮もそれを野村ら1年生に返した。

打撃でも精神面でも名門校をけん引

 また、こんなシーンもあった。5回、ピンチでマウンドに集まると、「ドンマイ、ドンマイ」。清宮は悪送球をした捕手の頭をポンポンと笑顔で叩いていた。上級生の頭を、だ。

「冬を越えてから甲子園を経験してる金子と同様、励ましたり、ゲームの中のアドバイスの声掛けとかチームを引っ張るんだという自覚が出た、と感じていました」と和泉監督。

 バッティングはもちろん、最強高校生に向かって突き進み、精神的にも名門校を引っ張る。清宮は成長を続けている。

 西東京大会は雨で2日順延されていた。オホーツク海方面からの北寄りの湿った冷たい風が吹き込んでいたのだという。清宮の最後のライトフライ。この瞬間もスコアボードの上の旗はセンターからホーム方向の北風になびいていた。

「最後、野球の神様が、もうちょい頑張れよ、と。本人が一番悔しいと感じてるはず。跳ねのけてくれるだろうと信じてる。みなさんも待っていてください」

 和泉監督の言葉がちょっと短かった夏に優しかった。

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著者プロフィール

1963年、長野県生まれ。ベースボール・マガジン社を退社後、週刊誌の記者を経てフリーに。「ホームラン」「読む野球」などに寄稿。野球を中心にスポーツの取材に携わる。

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