外野の状況を見れば当然なのだが… イチロー、スタメン外はチームの思惑??

丹羽政善

本拠地で達成なら売り上げもUP

チームは快勝し、マーリンズ全体でもイチローの記録達成へ盛り上がってきてはいるが… 【Getty Images】

 マーリンズはすでに記録達成に備え、さまざまな企画を考えているそうだ。打った瞬間に売り出す特製Tシャツ、フィールドセレモニー、花火、ゲストの招待等々……。マーリンズの選手では初の3000安打到達となるだけに、それこそ全部署を挙げての一大行事なのである。

 が、それを敵地で達成されてしまうと、すべてが水の泡……。

 観客動員のこともある。

 平均約2万人、実質1万5000人前後というのがマーリンズのホームゲームの一般的な観客数だ。

 イチローが記録に近づくとともにどう増えるか。あと2〜3本ともなれば、マーリンズとしては1万人から1万5000人の観客増を見込む。

 仮に1万人増として、チケット、食べ物、飲み物、駐車場など一人当たりが使うお金を想定すると、マーリンズの場合で約50ドル(約5000円)。その場合の売上げ増は50万ドル(約5000万円)で、2〜3本打つのに5試合を要するとすれば250万ドル(2億5000万円)の儲けとなる。

 一方、敵地で打たれれば、3000安打ビジネスのうまみを失う。記念Tシャツを買うとしても、打った日と1週間後では財布のひもの固さが違う。

球場内でカウントダウンも

 ゼネラルマネージャーが出来高を発生させないよう監督に特定の選手を使わないよう指示することはあるとされる。打席数や登板数を制限するのだ。

 今回のように選手の記録をホームで達成させるために出場機会を調整する、というケースは耳にしたことがないが、5試合連続スタメン出場なしというのは、4安打を打った5月20日以降では初めて。間が開いてもせいぜい3試合だった。

 イエリッチかオズーナをそろそろ休ませてもいいころだが、あと2試合で休みに入る。そもそも前日が移動日で休みだった。イチローが出ていなくても当然と言えば当然だが、チームが、イチローが3000安打を打った場合の準備をしているのを見聞きすると、なにかあるのかと勘繰りたくなる。

 ちなみにこの日から、ライトスタンドの1階席と2階席の間にある広告の一つが「2990」に変わっていた。カウントダウンが始まったのだ。

 チームの中では、徐々に盛り上がりが感じられるが、肝心のイチローのヒットは、打席に立っていないのだから、増えてもいない。

 ホームで記録達成となれば、最高のシナリオ。

 さて、思惑通りに行くかどうか。

 大リーグ通算3000安打まであと10本。前半は残り2試合。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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