手倉森「調和の取れたメンバーになった」 リオデジャネイロ五輪 メンバー発表会見
後ろを万全にしておきたかった
手倉森 メンバーを確実に決めたのは「よし、寝る」と思った時です(笑)。昨日の深夜、自分の中で決めて寝ました。選ぶのに難しかったところは、南アフリカ戦のそれぞれのパフォーマンスを見て、ここから絞らなければいけないのかという思いに駆られて、すべての選手に対して思い悩みました。その中でも、高いパフォーマンスを見せてくれた中谷、南アフリカ戦には(けがで)来なかった岩波の回復状況というところです。こればかりは予測での計算でしかない。そこの決断については慎重だったし、大きな決断だったと思います。東京五輪のOA選考についての提言は……今はリオのことしか考えていません(笑)。
――18名のポジションの配分を見ると、ボランチ4枚、サイドハーフ3枚となっているがここも迷わなかったのか。最終予選と比べて、セットプレー時の高さに不安があるが、そこの対策は?
手倉森 アジア最終予選まで、メンバー構成については今の質問のような考えが自分の軸だったと思います。中央の枚数を増やして、サイドの枚数を減らしている。高さもなさそうだというのは皆さんもお分かりだと思います。
だけど、自分が五輪に臨むイメージは、高さ対策だけ準備することも少し是正しなければいけないなと。日本の強みは何だといえばおそらく「速さ」だと。そこを十分考慮して、メンバー構成を作ってみよう。この大会に挑む時に、攻撃的にやれるのか。僕は必ず押し込まれて、守らなければならない状況が続く大会になろだろうなと、6割がた思っています。そうなった時に、相手を打ち負かそうと思ったときの守備、サイドバック、センターバック、ボランチの部分を厚くするために、ボランチを4枚にしました。ボランチ4枚の中に、遠藤航という後ろのどこでもやれる選手がいる。塩谷もサイドができる。そういった複数のポジションをこなせる選手を置いたときに、後ろを万全にしておきたかったというところです。逆に前の選手は、少数精鋭かもしれない。だけどチャンスも少数かもしれない。そこを突けるような選手をそろえたつもりです。そんな戦い方をイメージした、メンバーとポジション構成を考えました。
――1月の最終予選ではターンオーバーで大会を乗り切った。今回もターンオーバーをする考えはあるのか?
手倉森 全部が全部は代えられないですよね。だけど、戦いながら全員で戦い抜く覚悟がなければいけない時に、本当に早川(直樹)コンディショニングコーチと、しっかりと選手のコンディションを見極めて、体力の分散をしながら、みんなで戦い抜きたいなと思います。間違いなく全員ピッチに立ちますよ。そういう考えはこの大会でもあります。
――背番号が発表されていない理由は?
手倉森 背番号も南アフリカ戦で話題になってましたから。ここで背番号まで発表したら、次のネタが皆さん(メディアに)なくなるのではないかと思ったので(笑)。今日は背番号は伏せておきました。後日発表します。
――本大会は過密日程になる中で、OAの選手が軸となるのか。OAは固定せず、競争させるのか?
手倉森 コンディションを見極めなければいけないと思っています。OAの選手たちはもちろん、23歳以下の選手たちもJリーグで試合を重ねた先に、リオに乗り込む。そのときのコンディションによりますよね。OAというルールを採用して彼らに来てもらったわけですから、彼らの軸という意識、責任感は感じてもらわなければいけない。ただ、やはりコンディショニングありきだと思いますから、そこをしっかりと見極めて、チームスタッフで話をして、選手とコミュニケーションを取りながら。彼らが出続けるかというよりも、チームが勝つのが重要だということを、皆で理解してやっていければと思います。
一番上のメダルを目指してやりたい
手倉森 今までただ呼んで、ただ評価をして選手を出し入れしていたわけではない。手倉森ジャパンはものすごくコミュニケーションをとってきました。自チームでもメンバー争いに絡めていなかった選手が、本大会を前にして試合に絡むようになっている。選ばれなかった選手にも、既に試合に出ている選手たちもいます。それはこのチームを結成してから、この世代が日本サッカーの発展に携わらなければいけないということを意識してやってくれているからだと思います。
彼らはその思いを絶対に切らすことはない、逆に集まったときの彼らのまとまり、「あいつががんばっているから俺もやらなきゃ」と、絶対にそう思ってくれる世代だと思います。今回、選ばれた選手たちは将来に対して、これがすべてではない。外れた中にも可能性はたくさんあると。「託す側」になった選手は、間違いなく悔しさを糧にしなければいけない。そうなってくれることを期待します。
――押し込まれる展開を想定して後ろを厚めにしたとあった。それ以外に対戦相手の特徴を考えたメンバー選考なのか。また主将は遠藤のままなのか?
手倉森 もちろん対戦国、対戦国の環境を見据えたメンバーになりました。ナイジェリア戦だからこのメンバー、コロンビアだからこのメンバー、スウェーデンだから……ということで、どこにでも対処できるメンバーではないかと思います。トータルで考えて決めました。事前にマナウスに行けたのも大きいと思いますね。
キャプテンは遠藤のままでいきます。遠藤(航/わたる)のままで、リオに渡ります(笑)。
――岩波の現在のコンディションをどう認識しているのか?
手倉森 毎週、協会スタッフが情報を取りながら、実際に足を運んで彼のトレーニングをしっかり見ています。僕も彼のトレーニングを見させてもらいました、思った以上に回復が早くて、彼は来週から完全合流する。ともすれば、(Jリーグの)9日の試合にも間に合うという情報をもらっています。このチームに絡み続けてきた彼ですから、コンディションをそこ(リオ五輪)に持ってこれると、私の中で確信しました。あとは南アフリカ戦のサポーター席で「岩波」と書かれた旗がやけに目立っていました(笑)。
――大会の具体的な目標は?
手倉森 今日の(会見前に流れた)映像で、目標は15連勝してメダルを取るという話がありました。1次予選の3連勝と、最終予選の6連勝で、ここまで(公式戦で)9つ積み重ねていまする。あと6個積み重ねれば15連勝で金メダルです。最低でもメダルを取りたいと考えたときに、金を目指さないと銅にも引っかからない。“どう”にもこうにもなくなるというね(笑)。だからこそメダルを目指して、一番上のメダルを目指してやりたいと思います。
――メンバーは中村とOAを除くとほぼ最終予選のメンバー。まとまりを重視したと言っていたが、最終予選を終わってから、新たな選手を加えるよりも、これまでのまとまりを重視したということか?
手倉森 まるで昨日のミーティングを盗み聞きしたような質問ですね(笑)。本当にいろいろなことを考えました。いろいろな選手を呼んで、合宿でも試して、可能性を探り続けて、選手たちの評価をスタッフで話した際に、そういう話が出ました。「結局、最終予選のメンバーだよね」というのが話をしていく中で、後で気付いた話でした。いいところに気付きましたよ(笑)。
――韓国代表はOA3人とも海外組。ブラジルも37歳のGKをメンバーに入れた。今日のメンバーを見て、選手たちが世界の修羅場をくぐっていないと思った。これからどうやって修羅場の経験のない選手に鞭を入れていくのか。
手倉森 修羅場を、日本の国としてそう簡単にくぐれるのか。だからこそ修羅場を与えなければいけない選手たちがまだまだたくさんいると思っています。私は日本のサッカーのこれからの勝負はロシアW杯にくるだろうなと。それに対して若い世代と、そこで可能性を持ってほしい(OAの)3人に、ぜひリオ五輪を修羅場にしてほしいという考えでこのメンバーにしました。
僕は修羅場を経験していないということを、彼らを見て一切考えていなくて、ぜひ修羅場を通らせたいという思いが強かったです。この大会を経験したメンバーが、間違いなくロシア(W杯)へその修羅場を運んでくれるだろうと思います。